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Phonitor xe レビュー

  これまでの投稿で、Phonitor3・Phonitor xと書いてきましたが、ここでPhonitor xeとしての記事も書いておきたいと思います。凡そこれまでの記事で、各機種の説明とサウンドの住み分けと結論は出ているのですが、Phonitor xeをこの3機種の中で位置づけるとすると、最も芸術寄りで美しきサウンドを放つ機材と言えます。これはこれまでにも書いてきたとおりですが、各機材としての立ち位置というものはトレードオフと言えるサウンドテイストを、種別によって双方に補うようなラインナップと言えます。国際エンドーサーである僕としての所感と、各機種の概要とサウンドの方向性は以下の通りです。 Phonitor3:リニアとリアルを最重要視。SPLとしてはスタジオ機材として扱っているが、ジャズやライブ音源、更にはクラシックなどのリスニングには向くと思える。それは演奏における生のリアリティと演奏家たちの息吹を感じ取る芸術鑑賞として、最右翼と考えられるジャンル故に候補として挙がる機材と言えよう。その他のジャンルでも、楽曲のディテイルをダイレクトに感じ取りたい方には、最もお勧めの機材と言える。 Phonitor x:この3機種の中で、最もバランスの良い機材。外部出力端子も持ち合わせ、機能面からも最も汎用性が高いと言える。Phonitor3がリニアとリアルを前面に押し出すのに対し、楽曲内でリアリティは示しつつも、その中には美しさもテイストとして組み入れていることから、極度に強調されたリアリティではなく、楽曲全体の解像度を深めるためのリアリティと捉えられる。リスニング用途としてVGPで6連覇を果たし殿堂入りしていることからも、その立ち位置というものはリスニング機としてハッキリとしているが、スタジオ機材としても非常に優れていると考えている。これは昨今のスタジオ機材とリスニング機材が限りなく融合しようとしている時代背景に等しく、Phonitor xはその代表格と言えよう。美しく楽曲のディテイルをハッキリと映し出すなど、中々ここまでの表現力のある機材が出てこないからこそ、SPLが絶対王者として君臨し続けている証なのであろう。 Phonitor xe:Phonitor xのサウンドを更にリスニング機としての磨きをかけ、楽曲内での凹凸感をよりフラットにしているイメージ。非常にスマートに聴こえ

Phonitor x レビュー

僕の中でBest of Headphone Ampと言えば、間違いなくPhonitor xを選びます。最も純度が高く、味付けを排するだけ排したHi-Fiサウンドで、良くぞここまで表現したという機材です。前回の投稿では、Phonitor3からの買い替えということでPhonitor xを選んだわけですが、今回はここにPhonitor xeも含めて話を展開してみたいと思います。 Phonitor xとPhonitor xeの違いというと、外部出力が有るか無いかの違いくらいにも思えるのですが、実際にはそのサウンドの違いというものが最たる違いと言えるかと思います。機能や数値的な違いというもの以上に、その音色を実際に感じ取るということは最も重要で、欧米メーカーの人間たちも数値的な話というものは余り表向き説明されることはなく、もっと対極を成す音色としての在り方というものが話題の中心になることが大半です。この観点から、似たような2機種と思われがちな各機材たちを、具体的に音色の面から説明しなぜ自分にとってはPhonitor xであったのかを明らかにしていきたいと思います。 先の投稿で書きました通り、Phonitor3はリニアとリアルを融合したモデルで、Phonitor xはリニアとリアルは一部残しつつも、より広大なステレオイメージでサウンドを作ってきています。しかしその広大なステレオイメージというもの自体に強調しすぎるような味付けはなく、サウンド内の凸凹もほぼそのまま拾っているイメージです。対してPhonitor xeは、その凸凹を少しフラットにし、美しさの追及へと方向性を走らせている感があり、この箇所が僕にとってはリニアとリアルさがもう一つ欲しいと思えたところでした。 そういう意味で言うと、機能面・サウンド面双方に最もバランスよく思えたのがPhonitor xで、Kii Audioのような究極的なスピーカーと並べてマスタリングを行う際にも、Phonitor xは自身の存在感を抜群に示してくるところがありました。何が抜群かと言うと、何と言っても表現のバランス感覚が最強と思えます。特に何かを強調しているわけではないのに、アタック音や弦が擦れる音、ある種の雑音とも捉えられるボーカルの歯擦音までを、見事なまでに良い意味でも悪い意味でもそのままに映し出してきます。ただPhonitor3と違う

Phonitor3 レビュー

Phonitor xとPhonitor xeというSPLの顔とも言えるヘッドフォンアンプ2機種に少し隠れる形となりますが、Phonitor3という名機も存在しますのでブログ記事にしておきたいと思います。Phonitor xとPhonitor xeはリスニング寄り、Phonitor3はスタジオ寄りというイメージがあるかと思いますが、僕はあまりその方向性というものは感じていません。何よりも 『どういった音を欲しているのか?』 という論点に集約して議論を展開したいと思うのですが、僕自身が自分のスタジオに導入する機材をスタジオ系とされるPhonitor3から始まり、結局Phonitor xに落ち着いたという経験からも、十分なケーススタディを構築できているかと思いますのでお伝えできたらと思います。 Phonitor3は、ずばりサウンドの方向性をお伝えすると『リニア、リアル』という言葉に集約されるかと思います。かなり楽曲内のディテイルというものを、しっかりとした輪郭を持ってして精度高く表現しようとしているイメージです。こうしたサウンドを求めるのであれば、圧倒的にPhonitor3を選ぶべきかと思います。これは別にスタジオ用ということだけでなく、十分にリスニングとしても対応できると感じており、例えばジャズなどの楽曲をその場のリアリティあるインプロヴィゼーションや、各楽器のエナジーを求めるのであればとても良い選択かと思います。 では何故Phonitor3からPhonitor xへ買い換えたのか?という論点ですが、僕の場合は各楽曲の中のディテイルを細かに聴き分けるというよりは、全体像としての楽曲の完成度を判断する材料にヘッドフォンアンプを使う傾向にあります。スピーカーは1000万円近くの価格が付くようなKii Audio(こちらも国際エンドーサー)のフルコンフィグレーションを使用していますので、Kii Auidoにない要素をPhonitor xに求めています。どちらかというとKii AuidoもHi-Fi Audioとして本国ではプロモーションが行われていますが、かなりリニアかつリアルです。最高に美しいサウンドを奏でますが、正直長時間聴いているのは疲れるような精度の高さがあります。全体像としての楽曲の完成度を感じるための要素は、Kii Audioにもふんだんに含まれるのですが、更なる

SPL マイクプリアンプCrescendo

  SPLの人気機材の中に、今回もご紹介させて頂くCrescendoがあります。『今回も』という表現は、このCrescendoのリリースに至る過程や、僕のアイディアを採用してもらったという経緯を以前にもそれなりのご紹介をしていたので、今回は実際にそのサウンドそのものについて、実例を用いてご説明していきたいと思います。 上記添付の動画は、僕が世界で大成功を収めたアルバム『 ART OF RICHARD CLAYDERMAN 』の中の一曲です。ピアノを日本にてCrescendoを使ってレコーディングしていますが、ストリングスセクションはサンクトペテルブルグで旧友のマリアに録ってもらったものです。(ロシアが戦争状態に入ってしまい、こうした企画もできなくなってしまったのは残念です) このアルバム全体に走っている哲学というものは、『世界最高のアーティストを集め、世界最先端のサウンドで仕上げ、最高傑作を作る』というものでした。実際参加してくれたアーティストたちはジョン・キャペック(ダイアナ・ロス、TOTO、オリビエ・ニュートンジョンの作曲家)、チャック・サボ(エルトン・ジョンやブライアン・アダムスのドラマー)をはじめ、錚々たるメンバーたちを集めることができ、プロデューサーは僕でしたが、ほぼ現場のアイディアで完成したと言っても良いほどに口を出していません。そして次の世界最先端のサウンドというテーマですが、こちらに関しては僕のみの意見で出来上がっています。これは参加アーティストたちも含め、他のメンバーの誰よりも、国際エンドーサーとしてのキャリアがあったうえで、メーカー側の意図や最先端を生み出すという意味では自分以外の人材を探せないと思っていたところもありました。最高傑作という意味では世界中で大ヒットしてくれたということと、それが最高傑作であるか否かはリンクするかわかりませんが、僕自身がこれ以上のアルバムをもう作れないと思っているところから、少なくとも自分にとっての最高傑作にはなっていると思います。 こうした背景があるのですが、これらを踏まえた上で世界最先端のサウンドとCrescendoがどうリンクして行くのかを述べたいと思います。 現在のマスタリングギアにおいて、SPLは2018年あたりから確固たる地位を築いています。PQに始まりIRONがその後鮮烈なデビューを果たし、そしてマスタ

SPL Vitalizer・・・最初の一台に良いと思います。

 大分前に撮影していたSPL Vitalizerの動画が、ようやくアップされましたのでブログでも解説してみたいと思います。 そもそもVitalizerの立ち位置というものが、自分自身使い込んでみるまで良くわからなかったのですが、触ってみれば「ああ、なるほど」と思えるSPLの哲学がありました。昨今の機材の中には、EQやコンプレッサーといった部類にジャンル分けされず、独自のアルゴリズムと呼び名で機能があったりと、個性を強く発揮しないと市場の中で埋没してしまうという傾向があると思います。その個性の源流ともいうべきVitalizerは、1990年代には初代が発売されていましたので、SPLのアイディアが他の機材メーカーへ伝染して行ったと説明した方が良いかと思います。 SPLの場合は、通常のEQもコンプレッサーもラインナップにあるわけで、それを敢えてVitalizerでは楽曲内で必要とされる箇所を全部入りにして機能を圧縮したモデル・・・とでも言いましょうか・・・表現が難しいのですが、SPLの全製品を所有する立場からしても、このVitalizerの魅力というもは良くわかります。 真空管のドライブ量を調整することもできれば、低音の定位をハッキリさせるために用いる Bass Compressor、高音域を輝かせるInstanceまで、その他これ一台でマスターに掛けたい凡その機能は持ち合わせていると言っても良いでしょう。いきなりマスタリング機材を一気に買うことはあまりお勧めできなく、その有用性や可能性を存分に知った後に徐々に機材を増やして行く方向性が良いかと思います。その中の一台として、音の扱い方を知る意味でも本当に良くできた一台だと思います。 また、ミックスバスに掛けるにあたっては、さきほどのご説明でおおよそ網羅されていると思いますが、更にはドラムバスに掛けると非常に良い効果を得られるはずです。昨今のサウンドは、ナチュラルに聴こえる様に極限まで作り込まれます。つまりは、何となく聴いていては何を触っているかわからないほどに、作意の極致ともいうべき作り込みが行われているサウンドが主流です。そうした作意というものが何であるのかを理解する意味でも、先ずは触ってみて欲しい一台です。 各セクションにおける音の変化と、その効果については実際の動画をご覧ください。僕はこのSPLならではのディスクリー

IGS Audio Tubecore 500 について

 僕としてはもっともっと評価を得ても良いと思っている、Tubecore500について書いてみたいと思います。ノブの量が多く、難しそう・・・と思われているのか、シンプルなOne LAがダントツに人気があるので、Tubecoreの魅力について書いてみたいと思います。 Tubecore500は、その名の通り真空管を用いたコンプレッサーでして、IGS Auidoのフラッグシップモデルです。IGSお得意のリッチテイスト漂う濃密なサウンドは、フラッグシップ故にこれでもかというほどに注ぎ込まれています。そちらに関しては動画を見て頂くとして、更には各セクションの機能の在り方というか、効き具合が僕は非常に好みです。リッチな中にも、 Hold(Threshold)を増して行き、その効き具合というものをAttackとReleaseの振れ幅で調整して行くわけですが、この三つの機能の効き具合と割合が何とも絶妙だと思えるのです。特にReleaseの掛かり方が非常に独特で(IGS Audio全ての機材に共通な概念で、Releaseを如何に上手に使えるかで楽曲クオリティが大きく左右します。ただ、機材によって挙動は全く異なります。)、抑えるのか表に出すのかの意思決定においての裁量が非常に大きいと感じます。 僕は常々、機材の度量の大きさ、自由度の高さ、そして器の大きさというものについて言及してきました。それはユーザー側が出来ること、やれることの振れ幅を大きく与えられているか否かで、良い機材メーカーほど、ユーザーに与えられている裁量というものが大きいと感じています。それは機材を製造する側としても、機材自体の度量の範囲を大きくすればするほど、深層部分で込み入った設計を求められるはずですが、それを承知した上で理想を追い求めるメーカーとしての姿勢というものが大好きです。 IGS Audioは、そんな理想的なメーカーの姿勢を持ち合わせ、Tubecore500をフラッグシップに据えている意味というものを感じさせます。

なぜ世界のトップスタジオはMAGIX SEQUOIAなのか?

  世界中のトップスタジオが、MAGIXのSEQUOIAを導入していることは、皆様よくご存じのことと思います。しかしなぜここまで支持を受けているのかを疑問に思われた方は多いと思いますが、現在国際エンドーサーとして活動する僕自身も、その昔は何故なのかをよく理解していませんでした。 SEQUOIAは12辺りから自分自身で購入して使い始め、確か13のバージョン辺りで国際エンドーサー、そして15辺りで国内独占販売権のライセンスを取得して、代理店としての活動に入っていったという経緯だったかと思います。ここまで様々な立場を取り、MAGIXと共にキャリアを積んできたのは、日本人では僕だけのはずです。実際僕の作品は、これまでほぼ100% SEQUOIAかSamplitudeで作成されており、その理由は簡単明瞭で『とにかく音が良いから』という点と、『メーター類の扱いやすさ、特にPeekとRMSは他のどんなプラグインやDAWでも追い付けない見やすさと正確さを持ち合わせている』という点、それに『純正のプラグインが物凄く優秀』という辺りが選択理由かと思います。 ご存じの通り、僕はハードギアなりプラグインなりを極限まで激しく使い込んでサウンドを作ります。極端とも言えるようなその使い方は、あまりその理由などなく、単に自分の頭の中で鳴っている音を現実世界に持ってくるには、あれくらいアグレッシブな使い方をしないと作り上げられません。何か計算をしているというよりは、理想がまず自分の中で走っていて、理想という形のないものをこの世の中に持ってくるプロセスこそが、あのToo Muchとも言えるような機材の使い方になります。 そこで必要になるのがSEQUOIAでして、強力なサウンドソースを何の嫌味もなく正直に受け止めてくれるDAWが必要になるわけです。単に透明感があるとか、密度が濃いとか、そういう理由だけでなく、強烈なサウンドを平然と粒立ち良く受け止めてくれるDAWはSEQUOIAだけだったということです。 こうした事例からも、どれほどの許容範囲を持ち合わせているDAWかをお判りいただけるかと思います。世界の潮流というものは、どの産業においても激しいものです。僕が率いる会社は現在、音楽や音楽関連の機材を販売するのみでなく、『音のディープテック』という立ち位置にて、研究開発を行い世界と戦う素養を持つ組織として

SPL PASSEQ + GEMINI M/S デモ動画

世界でも珍しい、SPL PASSEQをGEMINIと組み合わせることで、M/Sのコンフィグレーションを組んで実演してみました。M/Sでの使用は、ステレオとは全く違う姿を各機材示してくるので、また新たな魅力を発見するきっかけともなります。今回の動画でも、PASSEQはステレオとは全く違う表情を見せ、一リファレンスとして『ステレオとM/Sの違い』という意味からも、非常に有用な内容になったかと思います。 この動画では、途中GEMEINIにも触れていますが、エリプティカルフィルターやセンターを強めるトリムを用いるなど、機能の在り方や実際の音の変化というものにも触れて頂けるかと思います。 M/Sで用いた時のPASSEQというのは、意外なほどに個性を発揮し、ステレオ時には楽曲に対して積極的な介入をして来るというよりは、楽曲の個性に追随するイメージだと書きましたが、M/Sに至っては楽曲の音像にまで影響するほどに、かなり自らの存在感というものを前面に押し出す機材に生まれ変わります。この辺り、ステレオのデモと見比べて頂ければと思うのですが、機材の捉え方という意味で言うのであれば、これまでの先入観で一律の使用方法に限定されてしまっていた機材を、新たな境地に持って行く良い機会にもなりますので、是非一度そもそもの先入観を捨てて新たな価値観を再構築する意識で見て頂ければと思います。 こうした新たな視点や発見というのは、特に楽曲に対してのアプローチが物凄く変わりますし、見える景色が本当に異なりますので、自らの引き出しがグッと増える感覚にもなります。 僕自身、同じ機材でこうも大きく価値観が変化するというのは、自分が如何に物を知らなく自らの価値基準に固執してしまっているかを知る良い機会にもなりますし、その新たなる自覚が更なる可能性を与えてくれることにもなります。そんな素敵な世界観を皆様と共有できるのであれば幸甚です。

SPL PASSEQ ステレオ/デモ動画について

 SPLの機材の中でも人気のPASSEQをステレオで使用した場合のデモ動画の解説です。この動画の中では使用方法というか、実際のサウンドの変化に重きが置かれており、解説はかなり割愛しているので文面に起こしておきたいと思います。 まずPASSEQが特徴的なのは、3バンドパッシブEQということと、120vのオペアンプで駆動しているところが真っ先に挙げられます。殆どのパッシブEQは2バンドが主流であり、中央帯域にブーストとカットを用いているのには、多少慣れが必要ではありますが、パッシブならではの独特なカーブ感の中で演出される音像は何とも心地の良いものです。僕の場合、他の国際エンドーサーになっているメーカーでパッシブEQを経験していますが、一例として挙げるのであればIGS AudioのRubber Bandがラック版・500シリーズ版双方にとてつもなく個性的でした。ある意味今回のPASSEQとは対極を行くような機材でして、500シリーズのRubber Bandは個性が強烈すぎて使いこなすのが大変ですが、慣れてしまえば味付けにはこれ以上ないほどの美しさとリッチテイストを楽曲にもたらしてくれます。 この対局というところに論点を当ててみたいと思いますが、Rubber Band500の強烈な個性に対して、PASSEQはある種の『クールなサウンドづくり』に徹していると感じています。個性がないと言っているのではなく、さらりと難しいことをやってのける高機能は持ち合わせていても、主張というものを一切排して、楽曲が既に持ち合わせている魅力と方向性にとことん追随しながら、自らを変幻自在に操れる自由度がPASSEQの個性とも言えるかもしれません。そんなPASSEQなので、僕の使い方としてはIGS Audioのラック版Rubber BandとBetter MakerのパッシブEQモードの2重構造で低音部をブーストし、カットはPASSEQで行うといった使用方法が大好きです。若しくは高音部のブーストはPASSEQ、カットをプラグインFinalEffectのEQで行うということもします。この辺りの使い分けと組み合わせというものは、何度も違う楽曲で試して行きながら試行錯誤するものなので、皆さんもぜひトライしてみてください。 また、先に述べている120vで駆動するという利点において、PASSEQのような音圧が

SPLを中心としたマスタリング機材/機材構成の考え方。

 この動画では、SPLを中心としたマスタリング機材と機材構成、そしてチェインの考え方というものをお伝えしています。この考え方という概念自体が、ユーザー間や市場において余りハッキリしていないのではないかと思うのですが、『こういう機材があるから、こう使ってみよう』という以上に、まず自分がどういう音が欲しく、音として/作品としての最終完成図を描くことが最も重要かと思います。この根底にある考え方があってこそ、その先にある途中経過であるプロセスを議論することになるのですが、そもそものスタートラインである根底の考えがしっかりしていないと何時まで経っても準備段階で困惑することになります。 要は機材選びやその使い方というのはあくまでプロセスであり、根底にある自らの理想に近づけていく作業でしかないわけです。その作業・プロセスにいくらフォーカスしても、それ自体に哲学や思想があるわけではないので、答えが一向に近づけないということになります。『こうするんだ。こういうものを作りたい』という青写真が明確化された考えがあってこそのプロセスですので、この辺りの考え方というものが最も重要であることをまず念頭に置いて頂ければと思います。この考え方は何事においても共通する概念かと思いますが、日本国内にスタジオ機材のメジャーメーカーがない以上、その根底にある考え方というものの発生源が存在しないのかと思います。僕の国際エンドーサーという立ち位置も、こうした国内と世界との歪を少しでもなくすという意味合いもあると思っております。 僕の場合は、国際エンドーサーになることは自分の音楽活動において最も重要視していました。それ故に、『世界最先端のHi-Fiサウンドが自分は欲しい。それで世界と勝負するんだ』という明確なビジョンを当初より持っていました。それが昨今における活動につながっていくわけで、この考え方は未だに何も変わっていません。 是非皆様もプロセスや作業内容ではなく、自分の奥底に持ち合わせる音の理想と行きつく先をまず掲げて頂ければと思います。

IGS Audio 576 Blue Stripe デモ

  僕の特技の中の一つに、機材デモというものがあります。この動画のコメントでも多数書いて頂いていますが、世界中から『このデモ動画が良かった』というお声を頂戴でき、結局IGS Audioの本国サイトに採用になったという曰つきの動画です。 国際公式エンドーサーを名乗る以上、この辺りは本国との関係性を皆様に明確に示さないといけないと思っていますし、日本人がこうした形で世界に出て行く姿というものを皆様に知って頂きたいところです。決して手も足も出ない世界ではなく、柔軟な精神と視線、それに明確な目標があれば必ず手が届くことを知って頂きたいと思います。 さて、IGS Audio 576ですが、改めて4年前に撮影したこの動画に触れてみたというのは、サポートへこの動画と同じ音が出ないといったお問い合わせや、実際の使用感についてのご不明点などが複数寄せられていましたので、多少のレクチャーや考え方も含めて文面に起こしてみました。 576 Blue Stripeは、とにかく効きが非常に強い機材でして、どうせ実機を買うならばこれくらいの個性を持っていてい欲しいと個人的に思っています。1176よりも1176らしいというか、本来1176が持ち合わせていた個性に対して、更に理解を深めて効きを強くして、IGS Auidoらしいリッチテイストを加えたといった感じかと思います。一方効きが強すぎると思ったら、Releaseを強めれば一気にトーンダウンするようなハッキリとした機材としての態度も僕は好感を持っています。 先に触れたIGS Auidoの代名詞とも言える『リッチテイスト』とは、所謂濃厚濃密なブランデーのようなサウンドを連想させるところがあり、この味わいというものについては、今流通しているメジャーメーカーではIGS Audioからのみ感じられたものでもあります。リッチテイストはIGS Audioについてはほぼ全ての機材から感じ取ることができ、オールドファッションの外観にはある意味似つかわない、何とも色気のあるサウンドを作り込んできています。そのリッチテイストとかなり激しい1176のアルゴリズムを進化させた576 Blue Stripeは、その独特な魅力をユーザーに強くアプローチしてくる機材とも言えます。 そして何と言っても、扱いきれないくらいの『じゃじゃ馬』テイストを演出しようと思うと、簡単にそのサ

SPL Channel One Mk3レビュー

以前にデモ動画を担当させて頂いた、 Channel One Mk3 について触れてみたいと思います。この動画は国際エンドーサーのデモとしてSPLの本国でも採用されているのですが、サクッと撮影してしまいましたので、画角など課題も多いですが、アマチュア感溢れる動画にどうかお優しい目線で見て頂けると幸いです。 さて、この機材としての所感として、孤高で最先端を行くSPLならではということで、先ずは非常に多彩であることは動画の通りです。真空管のOn/Offまで盛り込まれており、チャンネルストリップとしては限界とも言える機能の盛り込み方で、元々多彩なSPLの機材の臨界点を見たような気分です(笑)。各機能については、マニュアルと動画を併せ持たせて理解を進めて頂ければと思うのですが、恐らくは皆様何と言ってもこの機材の音に対しての所感を書いて欲しいところかと思います。 先ずChannel One Mk3は、120vが採用されていないというところが最も大きい特徴かと思います。120vの搭載/非搭載は、SPL社が『この機材をこういう音にしよう』という前提がかなり色濃く出るところでして、120vが採用されている機材は、良い意味でも悪い意味でもスーパークリーン、限界を超えるようなHi-Fiを求める方は是非120vを積んだ機材へ行っていただきたいと思います。それに比べ、120vモジュールを積んでいない機材に関しては、SPLならではのクリーンさと共に『かっちり感』『固まり感』というものが全面的に押し出されている感じがします。ここは本当に使い分けだと思いますので、理想は120vを積んでいるスーパークリーンの代名詞であり限界値とも言える Crecendo と、120vを積んでいない今回のChannel One Mk3双方に持ち合わせていることが楽曲制作により華を持たせてくれるかと思います。 今までの作品でも僕の場合は、この辺りの音色感で使う機材を決めていたというところがあります。 例えば、ジョン・キャペックを迎えて制作したエルトン・ジョンのYour Songを、エルトン・ジョンのドラマーとしても著名なチャック・サボを迎えて、実際にドラムを叩いてもらった作品があります。この時僕が使用したドラム向けのサミングミキサーは、 Mix Dream を使用しており、このMix Dreamには120vは採

全てのプラグインを異次元のサウンドにブラッシュアップできる、Final Masterが遂に登場。

 企画立案から2年以上が経過し、ようやく皆様にお伝えすることができる新製品のご紹介です。その名もFinal Master。 僕としては必ず画期的で革命的な要素を新製品に求めていきたいと思っていますが、今回はデモ動画の通り、『既存の全てのプラグインが、Final Masterを介せばディストーションや音痩せ、音割れなどから完全開放される』という夢のプラグインを企画してみました。 これFinalEffectシリーズとして、海外でも話題になったのですが、僕がコンセプトとしたのは『ハードギアのダイナミックさと利きの強さ』というものでした。これを全てのプラグインへ享受できるような作りにできないだろうか・・・というメチャクチャな企画を立てたわけですが、またまた世界中の超絶に優秀なエンジニアたちが頭を捻りに捻って完成させたというものです。 このプログラミングを率いたBMWのプログラミングを担当するDavidはミュンヘン工科大学、サポート役に回っていたAdamがケンブリッジ、そして僕がハーバードという構成で、世界最高の大学出身者たちが芸術・技術・ビジネスを完全融合させる哲学を共有し制作されました。この三位一体の考え方というものが、意外と音の世界には共有化されておらず、それぞれの立ち位置で乱立してしまっているがゆえに更なる次世代が生まれ難いといった現象を垣間見、僕の方でその課題点を洗い出してリストラクチャリングさせることで、更なる新たな技術を生み出した・・・という感じでしょうか。 皆さんが既に使用してらっしゃるプラグインが、これまでのデジタル領域では出来なかったサウンド作りというものに挑戦できる新たな取り組みは、今後の音楽制作に全く新たな視点を組み入れることになるはずです。

FinalEffectから、Final Masterがリリースされます。

 前回のプラグイン開発から少しお時間を頂きましたが、次作がおおよそ完成しましたので記事にしてみたいと思います。今回はその名も「Final Master」です。 既にFinalEffectは世界中でヒットしまして、特にアメリカ・ドイツ・イギリスを中心に今日現在で218ものディーラーで販売されるに至りました。音楽先進国での成功を目指してきた身として、この結果は想像を超えるものであったのですが、今後も更にシェアを伸ばしていきたいと考えています。こうした背景の中で次に取り組んだのが、 「既に使用されているプラグインを取り込む仕組みづくり」 でした。著名なところではWaves、Plugin Aliance、UADだと思うのですが、これら全てのプラグインがFinal Masterへ取り込むことが出来、そしてこれまで悩みであった音痩せやディストーション、またプラグインならではの何とも言えない弱々しさというものが一気に開放されるという仕組みづくりを行いました。つまりは、サウンドのプラットフォーマーとしての立ち位置を目指し、今回企画・立案・開発が推移しました。何度も企画を見直しながら、「この夢のプロジェクト自体が本当に実現できるのか」という思いを馳せながら、自動車メーカーのBMWのプログラミングを行っているチームを招聘し、今回開発をドイツ側と共同で行った経緯もあります。結果、これらが実現し、こうして発表できるところまで漕ぎ着けることが出来たというわけです。 僕が実際に所有しているハードギア、例えばelysiaのalpha compressorのプラグインをFinal Masterに挿して使用すると、場合によってはハードのalpha compressorを凌ぐ性能を発揮するところまで製品の精度を高めることが出来たと自負しています。 そして今後の施策としてさらなる最も大きいニュースとして、FinalEffectシリーズがサブスクリプション化されます。勿論永年でご購入頂くことも可能ですが、FinalEffect自体の販売経路が世界シェアに拡大したことから、全てのパッケージを月額$10で提供されることが決定しています。 更にはエンゲージメントの強いFacebookにて、ご希望をお聞きしながらプリセットを随時追加していく仕組みづくりを構築中です。AIマスタリングなどもありますが、あくまで通常の