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SPL マイクプリアンプCrescendo

 


SPLの人気機材の中に、今回もご紹介させて頂くCrescendoがあります。『今回も』という表現は、このCrescendoのリリースに至る過程や、僕のアイディアを採用してもらったという経緯を以前にもそれなりのご紹介をしていたので、今回は実際にそのサウンドそのものについて、実例を用いてご説明していきたいと思います。

上記添付の動画は、僕が世界で大成功を収めたアルバム『ART OF RICHARD CLAYDERMAN』の中の一曲です。ピアノを日本にてCrescendoを使ってレコーディングしていますが、ストリングスセクションはサンクトペテルブルグで旧友のマリアに録ってもらったものです。(ロシアが戦争状態に入ってしまい、こうした企画もできなくなってしまったのは残念です)

このアルバム全体に走っている哲学というものは、『世界最高のアーティストを集め、世界最先端のサウンドで仕上げ、最高傑作を作る』というものでした。実際参加してくれたアーティストたちはジョン・キャペック(ダイアナ・ロス、TOTO、オリビエ・ニュートンジョンの作曲家)、チャック・サボ(エルトン・ジョンやブライアン・アダムスのドラマー)をはじめ、錚々たるメンバーたちを集めることができ、プロデューサーは僕でしたが、ほぼ現場のアイディアで完成したと言っても良いほどに口を出していません。そして次の世界最先端のサウンドというテーマですが、こちらに関しては僕のみの意見で出来上がっています。これは参加アーティストたちも含め、他のメンバーの誰よりも、国際エンドーサーとしてのキャリアがあったうえで、メーカー側の意図や最先端を生み出すという意味では自分以外の人材を探せないと思っていたところもありました。最高傑作という意味では世界中で大ヒットしてくれたということと、それが最高傑作であるか否かはリンクするかわかりませんが、僕自身がこれ以上のアルバムをもう作れないと思っているところから、少なくとも自分にとっての最高傑作にはなっていると思います。

こうした背景があるのですが、これらを踏まえた上で世界最先端のサウンドとCrescendoがどうリンクして行くのかを述べたいと思います。

現在のマスタリングギアにおいて、SPLは2018年あたりから確固たる地位を築いています。PQに始まりIRONがその後鮮烈なデビューを果たし、そしてマスタリングコンソールDMCをリリースした辺りで、その地位は確固たるものになったと思います。同時に、SPLで作られる世界中の楽曲は、ある意味SPL色に染められて出てくるわけで、必然的にマスタリング機材を司ることで世界中のサウンドを支配することにもなります。つまりはSPLの哲学が前面的に出た形で現在のサウンドにおけるあるべき姿が出来上がったわけですから、その哲学をマイクプリアンプに応用することによって、更にその色合いというものは加速します。こうした背景で作られたアルバムがART OF RICHARTD CLAYDERMANだったわけで、このアルバムに用いられている究極的なクリアサウンドを表現するには、Crescendoは欠かせない存在でした。

2024年11月現在の世界市場を見ても、このマイクプリアンプのサウンドを超えるものは中々出てこないと僕は思っています。本当に多くの機材を扱ってきましたが、世界に通用する次世代型の音ということになると、そう簡単に地位を確立することができないことは想像に難しくないと思います。その中で激しく競争し、激闘に耐えうるサウンドとして選んだのがCrescendoだったということです。


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