スキップしてメイン コンテンツに移動

日本で230vの運用について

電源において200vは簡単に引くことのできる国内ですが、ヨーロッパ製が大多数を占めるスタジオ機材においては230vがメインのため、電圧が足りない状況に陥ります。故に200vを減圧して115vで使用するケースが殆どと言え、この200vをなんとかして230vで運用してみたいと思った方は多いはずです。
もっとも僕もその一人で、アメリカで聴くサウンドとヨーロッパで聴くサウンドの違いというものは、双方の国に行くたびに感じていたことでした。勿論考え方が根本的に異なる両者ですので、違いが出て当然なのですが、機材の違いでもなく録られる音質の違いでもなく、何か本当に根っこの部分でヨーロッパとアメリカの違いというものを感じていました。僕も手っ取り早いので、115vは直ぐ様導入して100vとは異なる音質を手に入れることはできていました。
ここで電源やケーブル、タップ類の話になる前提として、絶対的に根本的な考え方が根底で出来ていること、そして自らの耳を常に疑われる、非常にレベルの高いクライアントたちから、ガンガンにクレームを言われながら鍛え上げられている柔軟な感性を持ち合わせていること、そして世界中の新曲に触れる機会に恵まれていることが絶対条件になります。自で
『 自分の作る音ならば間違いない、俺の価値観は絶対だ』
と思ったり考えているのであれば、その人は決して上に突き抜けることはありません。その考え方で、どうにかなってしまうクライアントしか仕事を受けられないからです。最高レベルに行き着くこともなく、成長はそこで止まります。適正な報酬、最高レベルでの感性と技術を売り込めば、それなりに自らの感性にも技術にも自信のあるクライアントからオファーを貰うことになります。そしてガチンコで意見を出し合いながら音を構築していくわけで、その場では必ず意見の衝突が起きます。その衝突を糧としながら、自らの感性や視野を育てていくことになり、そうしたクライアントと年に10人も出逢えばかなり揉まれます。自らの価値観など無に等しいくらいに否定され、揉みに揉まれて最後に残った価値観こそが自らのものとして最終的に残ることになるでしょう。また痛いのは、海外からのオーダーで、言語が全くわからない曲があったりします。例えばドイツ語やイタリア語、スロバキア語やウルド語(インド・パキスタン周辺の公用語・・・なのかな)が用いられている楽曲を今年担当しましたが、言葉により楽曲の解釈がかなり異なります。その言葉の違いを理解できない故に、途中で解雇されてしまうこともあります。まあ、これは避けられません。華々しく見える世界の舞台では、悔しさも倍増されノウハウとして自らに構築されます。
こうした前提の中で、電源の話を進めていきたく思います。


上の写真は、230vの運営に成功したスタジオの電源部の写真です。
先程のように、115vの運営はすでにしており、ヨーロッパ製にはUSに対応するため必ず115vのモードが付いていますので、以前はこの115vモードで動かしていました。確かに100vで115vモードを動かすよりは、遥かにきちんとした音が出ます。そもそも電圧が100vでは正規の設計上の理念に居ないわけですから当然です。しかし、意外と
『100vで問題なく動きますよ』
と国内でアナウンスしている機材にも、本来は115vというものが殆なので、まともに運用ができていないことになります。こういうケースが多いですね、意外と。僕も最近3機種ほどが、本来の電圧で運用できていないことに気づきました。これは機材本来の能力を使い切れていないので論外。
そして輸入機材の王道で、次のステップである115vを全面的に使用するようになり、そして今回の230vへと話が移行します。前置きが長すぎましたが、この前置きをしておかないと、単なるわけのわからないオーディオマニアで終わってしまう故に、少しばかり前提となるバックグラウンドをお話させて頂きました。このバックグラウンドがどういうものなのかによって、判断が大きく分かれるがゆえにどうしても文面が長くなってしまいます。申し訳ありません。
そして230vですね。。。これを実現しようとすると、国内にある情報ではほぼ不可能という回答になります。あちこちの電気屋さんで
『無理』
と言われ続け、仕方ないのでユニバーサルだけでも200vで運用するか・・・と諦めかけ、2年が経過しようとしていました。しかし、当初クライアントの一人として出入りしていた大学生と、何とか230vの運用ができないか ・・・という話し合いになり、2人でサイトを検索し始め、あれこれと調査を進めているうちに、
『これ行けるかもしれない・・・』
というものを発見しました。簡単に言えばヨーロッパに回答はあったわけで、 それを導入してどういう形で各部を接続するか・・・という難題も出てきました。しかし、2年間待ち続けた熱意というものは凄まじく、兎に角ドイツ・アメリカのメーカーサイトにアップロードされている説明書を読みまくり、サポートセンターに連絡を入れ、そして電圧に関するスイス工科大学の論文を読みまくって、2週間で凡そ事の流れというものを理解しました。機材の詳細については、高電圧故に事故になると大変なので、しばらく僕の方で運用した後にまた触れてみたいと思いますが、兎に角基本となる知識というものが結構必要でした。例えばNemaというUSを中心とした電源規格、この呼名さえ知らなかった故に大学生に教えてもらい、それを250v対応のケーブルをUSで探し当て、その後のルーターはドイツ製で30Aまで耐えられるもの、そしてその先のディストリビューターは10A仕様なので理にかなっていて、200vと230vを使い分ける手法に行き着いたりと、それはもう2週間で全体像を把握するまでには、ズブの素人だった僕にとってはかなりヘビーでした(ハーバード・ビジネス・スクールに居るときと同じくらい勉強量でした(笑))。因みにスタジオまで引かれている200v電源は20Aなので、第一のセクションである電源ディストリビューターは30Aの容量で通っていますので、余裕の容量でまとめることが出来ています。
今の所ユニバーサル電源である、SSL XL-DESKやNEVE8016+8804などは、115vから230vへのステップアップでは大幅に音質がクリアになりましたが、200vと230vでは違いは認められなかったので、200v運用という形で纏めました。その他スピーカーやEQ、コンプレッサーなど115v若しくは230vで駆動させる必要のある機材は、全て230vへ移管しました。
プロセスはこの程度にして、実際の音についてです。
115vと230vは、全く別物です。先に述べました、ドイツ周辺で聴いたスーパークリーン・サウンドは、あらゆる条件の中の一つとして、230vでの運用が不可欠であったのかと思います。金銭もノウハウもそれなりには必要となりますが、最終的なプロセスとして絶対的な存在かと思います。エンドース先のメーカーの友人に、115vと230vでの違いはあるか?との問をFacebook上でしていますが、12時間経過した今現在、回答はないのでこの問いに対しての明言は避けるかもしれません。実際にこれを英語で回答すれば、世界中に対して115vと230vは音色が違うと認めてしまうことになり、あまり宜しい方向性ではないかと思います。実際アメリカは最大の市場であり、そこが115v仕様であるならばスルーするかな・・・とも思います。実際に会った折に、聞いてみることにしようかと思っています。
また、この115vと230vの違いというものは、EQにも大きく出ました。特に僕の持っているSPL PQとCostum Audio Germnayの HD250Aの機材は、 別格の動きをするようになりました。より変化がわかりやすく、Q幅においても扱いやすい印象を受けます。
言葉で音をこねくり回して、変な既得権益みたいなものを作り上げてしまうのも好きではないので、あとは実際にスタジオに来て聴いて頂いたり、若しくは230vを導入されて自ら試してみて下さい。
もし230vまでの道のりが遠いようでしたら、コンサルタント致しますので、お声掛け下さい。少なくとも1ヶ月は自ら230vを走らせてから、ご要望にお応えしたいと思います。


Hiro's Mixing & Mastering / http://www.hirotoshi-furuya.com/shop
(ミキシング・マスタリング、こちらからご依頼ください。)
Official Website / http://www.hirotoshi-furuya.com
(お仕事のご依頼や、機材のお問い合わせは、オフィシャルサイトよりお願いします。)
Official Facebook Page / https://www.facebook.com/hiros.mixing.and.mastering/

コメント

このブログの人気の投稿

FinalEffectから、Final Masterがリリースされます。

 前回のプラグイン開発から少しお時間を頂きましたが、次作がおおよそ完成しましたので記事にしてみたいと思います。今回はその名も「Final Master」です。 既にFinalEffectは世界中でヒットしまして、特にアメリカ・ドイツ・イギリスを中心に今日現在で218ものディーラーで販売されるに至りました。音楽先進国での成功を目指してきた身として、この結果は想像を超えるものであったのですが、今後も更にシェアを伸ばしていきたいと考えています。こうした背景の中で次に取り組んだのが、 「既に使用されているプラグインを取り込む仕組みづくり」 でした。著名なところではWaves、Plugin Aliance、UADだと思うのですが、これら全てのプラグインがFinal Masterへ取り込むことが出来、そしてこれまで悩みであった音痩せやディストーション、またプラグインならではの何とも言えない弱々しさというものが一気に開放されるという仕組みづくりを行いました。つまりは、サウンドのプラットフォーマーとしての立ち位置を目指し、今回企画・立案・開発が推移しました。何度も企画を見直しながら、「この夢のプロジェクト自体が本当に実現できるのか」という思いを馳せながら、自動車メーカーのBMWのプログラミングを行っているチームを招聘し、今回開発をドイツ側と共同で行った経緯もあります。結果、これらが実現し、こうして発表できるところまで漕ぎ着けることが出来たというわけです。 僕が実際に所有しているハードギア、例えばelysiaのalpha compressorのプラグインをFinal Masterに挿して使用すると、場合によってはハードのalpha compressorを凌ぐ性能を発揮するところまで製品の精度を高めることが出来たと自負しています。 そして今後の施策としてさらなる最も大きいニュースとして、FinalEffectシリーズがサブスクリプション化されます。勿論永年でご購入頂くことも可能ですが、FinalEffect自体の販売経路が世界シェアに拡大したことから、全てのパッケージを月額$10で提供されることが決定しています。 更にはエンゲージメントの強いFacebookにて、ご希望をお聞きしながらプリセットを随時追加していく仕組みづくりを構築中です。AIマスタリングなどもありますが、あくま...

elysia / xpressor, nvelope, xfiter, karakter レビュー

elysia導入。その① 近年の音楽制作において、様々な模索をし膨大な時間と労力をスタジオワークに注いできた。演奏家として自らのスタイルを確立していく中で、追い求めるサウンドの理想はしっかりと見えていながら、中々先行きの見えない手探り状態が長く続いた。その理由の一つとして、自らが求めるサウンド感が日本国内には存在していなかったこと、そしてその実現に向けて世界に目を向けたところで、膨大な量の情報が集まる中での模索は困難を極めた。 『著名な欧米人エンジニアに仕事を頼んだが、自らのプロフィール写真はアウトボードばかり写っているが、実際のところはプラグインが相当量使用されていた。』 などの情報も混在し、メジャーどころのプラグインは一通り試してみた。しかし一聴すると良いと思えるものも、突き詰めれば突き詰めるほどに、またハイレゾリューション・オーディオを意識したサウンド感を生み出そうとすればするほど、必ずと言って良いほど、完成した音源は破綻をきたしていた。滑らかに曲線を描くはずであった弦楽器の音色は、デジタル処理されたプラグインにスポイルされ立体感を失い、幾通りにも重ねられたプラグインは、拘りこそ感じられるが最終的な理想とする仕上がりには程遠い。一体何がこうさせているのかを模索しても、デジタル処理の限界を超えられることはなく、特に奥行きと幅を求められるアコースティック楽器を主流とした音作りには工面させられた。何百時間、何千時間とスタジオで音色を求めようとも、回答は結局のところ得られなかった。 しかし、転機が驚くところで与えられた。 文化庁からの招聘で、学校コンサートを依頼された折、校歌を歌って欲しいとのことでCDを渡された。 『ICレコーダーか何かで録ったのかな・・・』 という程度に受け止めていたが、仕事に向かう道中カーステレオから流れてきたその校歌に驚かされた。内容としてはシンセサイザーの打ち込みとコーラスで構成されていたが、明らかに幅と奥行きが存在していた。自らが持ち合わせていた先入観に等しい、『学校の校歌にそこまでの予算をかけることはないだろう』という考えがサウンド側から覆され、校歌というシンプルな音楽の上に立った時、それがコンソール経由で制作されたことがクレジットからも読み取れ、またその校歌自体はSSLやNeveほど高価なコンソールを使用していない...