スキップしてメイン コンテンツに移動

SPL PASSEQ ステレオ/デモ動画について


 SPLの機材の中でも人気のPASSEQをステレオで使用した場合のデモ動画の解説です。この動画の中では使用方法というか、実際のサウンドの変化に重きが置かれており、解説はかなり割愛しているので文面に起こしておきたいと思います。

まずPASSEQが特徴的なのは、3バンドパッシブEQということと、120vのオペアンプで駆動しているところが真っ先に挙げられます。殆どのパッシブEQは2バンドが主流であり、中央帯域にブーストとカットを用いているのには、多少慣れが必要ではありますが、パッシブならではの独特なカーブ感の中で演出される音像は何とも心地の良いものです。僕の場合、他の国際エンドーサーになっているメーカーでパッシブEQを経験していますが、一例として挙げるのであればIGS AudioのRubber Bandがラック版・500シリーズ版双方にとてつもなく個性的でした。ある意味今回のPASSEQとは対極を行くような機材でして、500シリーズのRubber Bandは個性が強烈すぎて使いこなすのが大変ですが、慣れてしまえば味付けにはこれ以上ないほどの美しさとリッチテイストを楽曲にもたらしてくれます。

この対局というところに論点を当ててみたいと思いますが、Rubber Band500の強烈な個性に対して、PASSEQはある種の『クールなサウンドづくり』に徹していると感じています。個性がないと言っているのではなく、さらりと難しいことをやってのける高機能は持ち合わせていても、主張というものを一切排して、楽曲が既に持ち合わせている魅力と方向性にとことん追随しながら、自らを変幻自在に操れる自由度がPASSEQの個性とも言えるかもしれません。そんなPASSEQなので、僕の使い方としてはIGS Audioのラック版Rubber BandとBetter MakerのパッシブEQモードの2重構造で低音部をブーストし、カットはPASSEQで行うといった使用方法が大好きです。若しくは高音部のブーストはPASSEQ、カットをプラグインFinalEffectのEQで行うということもします。この辺りの使い分けと組み合わせというものは、何度も違う楽曲で試して行きながら試行錯誤するものなので、皆さんもぜひトライしてみてください。

また、先に述べている120vで駆動するという利点において、PASSEQのような音圧が非常にかかるパッシブEQに用いるというのは、SPLさんも本当にエグイというか存分に魅力を発揮できる個所を探し当ててきていると思います。パッシブEQは基本的には低音部と高音部の強調と協調を纏め上げるEQで、どうしても機材にかかる負担というものは大きくなります。特に低音部における機材への負担は、そのダイナミックレンジが確保できないと、非常にか細いイメージになり、これはハードギアでもか細くなってしまうEQというものを僕はよく知っています。それに対し強大なダイナミックレンジを有する120vテクノロジーをドッキングさせたアイディアはかなりのもので、その恩恵をもってしてPASSEQはスーパークリーンなサウンドと強大なダイナミックレンジで、この機材にしかできない音像で楽曲を輝かせてくれます。


コメント

このブログの人気の投稿

日本で230vの運用について

電源において200vは簡単に引くことのできる国内ですが、ヨーロッパ製が大多数を占めるスタジオ機材においては230vがメインのため、電圧が足りない状況に陥ります。故に200vを減圧して115vで使用するケースが殆どと言え、この200vをなんとかして230vで運用してみたいと思った方は多いはずです。 もっとも僕もその一人で、アメリカで聴くサウンドとヨーロッパで聴くサウンドの違いというものは、双方の国に行くたびに感じていたことでした。勿論考え方が根本的に異なる両者ですので、違いが出て当然なのですが、機材の違いでもなく録られる音質の違いでもなく、何か本当に根っこの部分でヨーロッパとアメリカの違いというものを感じていました。僕も手っ取り早いので、115vは直ぐ様導入して100vとは異なる音質を手に入れることはできていました。 ここで電源やケーブル、タップ類の話になる前提として、絶対的に根本的な考え方が根底で出来ていること、そして自らの耳を常に疑われる、非常にレベルの高いクライアントたちから、ガンガンにクレームを言われながら鍛え上げられている柔軟な感性を持ち合わせていること、そして世界中の新曲に触れる機会に恵まれていることが絶対条件になります。自で 『 自分の作る音ならば間違いない、俺の価値観は絶対だ』 と思ったり考えているのであれば、その人は決して上に突き抜けることはありません。その考え方で、どうにかなってしまうクライアントしか仕事を受けられないからです。最高レベルに行き着くこともなく、成長はそこで止まります。適正な報酬、最高レベルでの感性と技術を売り込めば、それなりに自らの感性にも技術にも自信のあるクライアントからオファーを貰うことになります。そしてガチンコで意見を出し合いながら音を構築していくわけで、その場では必ず意見の衝突が起きます。その衝突を糧としながら、自らの感性や視野を育てていくことになり、そうしたクライアントと年に10人も出逢えばかなり揉まれます。自らの価値観など無に等しいくらいに否定され、揉みに揉まれて最後に残った価値観こそが自らのものとして最終的に残ることになるでしょう。また痛いのは、海外からのオーダーで、言語が全くわからない曲があったりします。例えばドイツ語やイタリア語、スロバキア語やウルド語(インド・パキスタン周辺の公用語・・・なのかな)が用いら...

ミックス・マスタリングが上手くなりたければ、効きが強烈な機材を使え

  久しぶりに機材レビューではなく、音に対してのテクニック的なことを少し書いてみようと思います。最近聞こえてくる声として、 「古屋さんに影響されて、〇〇を買いました。」 或いは 「あの作品のあの音に憧れて、〇〇を買いました。」 というお言葉を頂きます。自分としては世界一の機材だと思っているからSPLを使っていますし、会社で代理店のライセンスも持っています。なので、皆様からのお声は心から喜ばしいことですし、全責任を持って間違いのない世界一の機材を購入して頂いていると思っています。これは自分の日々発言していることと行っていること、望んでいることとその結果によって良い影響を多方に渡って与えられていることは、全ての要素が一つの方向を向いて整合性が取れていると感じられ、大変喜ばしいことです。 では、SPLの何が世界一と言えるのか?或いは全く方向性は異なりますが、IGS Audioも一体何がそこまで魅力で、僕の会社で扱おうと思ったのか?色々と要素はありますが、端的に言えばそれは双方に非常に効きが強烈で、楽音を一発で別物に変化させてしまうパワーを持っている激しい変化率です。世界の激しい潮流で戦う僕としては、この強烈な狂気とも呼べるような音の変化が無ければ戦いようがありません。ちょこちょこっと、すこーしだけの変化で変わったのかなぁ・・・・みたいな楽音構成で勝負していては、絶対に世界で選ばれることはありません。これは断言できます。マスタリングであれば、特に劇的な変化をほぼ100%求められます。なので、どう扱ったら良いのかわからないくらいの激しい変化を持つ機材を手なずけ、自分の想像している楽音を遥かに超えるような機材に触れないと、激しい結果をもたらすことのできる自らの創造力がそもそも育ちません。可能性があれば何処までも追求したくなるのが人間で、やれるだけやり、行き付けるところの限界まで追い込んで、追い込み、更に追い込んで・・・・とやると失敗することも多々あります(笑)。 ただ、この徹底して追い込むというものが極限の極限まで行くと、そこから幾分か差し引くことも上手くなるようになります。いわゆるそれを調整と呼ぶのでしょうが、その調整できるところまでは、とにかく極限の追い込みこそが上達します。追い込みすぎてその国でスーパースターと呼ばれるアーティストにクビになったことも多々ありました...

SPL Channel One Mk3レビュー

以前にデモ動画を担当させて頂いた、 Channel One Mk3 について触れてみたいと思います。この動画は国際エンドーサーのデモとしてSPLの本国でも採用されているのですが、サクッと撮影してしまいましたので、画角など課題も多いですが、アマチュア感溢れる動画にどうかお優しい目線で見て頂けると幸いです。 さて、この機材としての所感として、孤高で最先端を行くSPLならではということで、先ずは非常に多彩であることは動画の通りです。真空管のOn/Offまで盛り込まれており、チャンネルストリップとしては限界とも言える機能の盛り込み方で、元々多彩なSPLの機材の臨界点を見たような気分です(笑)。各機能については、マニュアルと動画を併せ持たせて理解を進めて頂ければと思うのですが、恐らくは皆様何と言ってもこの機材の音に対しての所感を書いて欲しいところかと思います。 先ずChannel One Mk3は、120vが採用されていないというところが最も大きい特徴かと思います。120vの搭載/非搭載は、SPL社が『この機材をこういう音にしよう』という前提がかなり色濃く出るところでして、120vが採用されている機材は、良い意味でも悪い意味でもスーパークリーン、限界を超えるようなHi-Fiを求める方は是非120vを積んだ機材へ行っていただきたいと思います。それに比べ、120vモジュールを積んでいない機材に関しては、SPLならではのクリーンさと共に『かっちり感』『固まり感』というものが全面的に押し出されている感じがします。ここは本当に使い分けだと思いますので、理想は120vを積んでいるスーパークリーンの代名詞であり限界値とも言える Crecendo と、120vを積んでいない今回のChannel One Mk3双方に持ち合わせていることが楽曲制作により華を持たせてくれるかと思います。 今までの作品でも僕の場合は、この辺りの音色感で使う機材を決めていたというところがあります。 例えば、ジョン・キャペックを迎えて制作したエルトン・ジョンのYour Songを、エルトン・ジョンのドラマーとしても著名なチャック・サボを迎えて、実際にドラムを叩いてもらった作品があります。この時僕が使用したドラム向けのサミングミキサーは、 Mix Dream を使用しており、このMix Dreamには120vは採...