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DMSC Musiker Awards 受賞。。。だからこそ考える、日本の音楽業界。

サウンド・プロデュース、マスタリングのクライアントであり担当アーティストであるドイツのDie Denkazが、本国でDMSC Musiker Awardsに輝きました。 今年彼らがレコード会社と契約し、そして第一弾としてマスタリングを担当させて頂いた”Pfusch am Bau"がヨーロッパチャート7位にランクインし、そしてそのままの勢いでアワードの受賞となりました。 今年の頭に立てた”ヨーロッパでのアワード受賞”というものが現実になり、しかも自分が得意と思えないようなジャンルのマスタリングを担当しての快挙で、何とも複雑ではありますが、勿論嬉しさでいっぱいです。 国内ではこうした実績を背景にしながらお話をさせて頂くケースもありますが、まだまだ浸透とは遠い状況にあり、欧米から30~50年は遅れているであろう国内の現状をどう説明していくのかも自分の責務だと思っています。 その視点に立った折に考えることは、まず国内の音楽業界全体に共通していることとして、健全化というものが第一に上がるのではないかと思っています。健全化と言っても様々な物があるかと思いますが、簡単に言えば、 『楽しく明るく、老若男女だれもが楽しめる素敵な世界』 に生まれ変わらなければ、現在の国内における衰退を止めることは出来ないのではないかと思います。威嚇、嫉妬、嫉み、傲慢、無知、その他様々な不健全な世界観で満ちている音楽の世界は、一度本物の実力主義の世界観へと変貌を遂げなければならないと思えてなりません。 本物の実力主義とは、実績やそれまでの背景、そして人格のみで業界を牽引する人物たちを選び出す必要があるわけで、通るものを通っていない人物たちが上層部を成せば、それは様々な無理が通り当然不健全な精神で満ちるのは当たり前の成り行きと言えます。 専門的なイメージが先行しすぎてしまい、実際的な実力よりも声が大きいほうが勝ちのような世界観を構成すれば、物凄い優秀な頭脳とアグレッシブなスピード感で新しい世界観を構築してくるグローバルのトップに追い付いていける訳もありません。 そして誠に残念なのが、国内に存在する真に心から音楽を楽しもう、または本当に音楽の世界観が好きで、その世界に没頭している純真な方々が、嫌な思いをされているという事実です。 何故か声が大きい人が勝つこの世界、簡単に

elysia alpha compressor 到着

皆様こんにちは。 今日は King of Compressor 、elysiaのalpha compressorを扱います。遂に到着したこの機材ですが、やはりelysiaの本社で1時間ほど触ったくらいではその良さは分かっていませんでした。加えて自らのスタジオですと、様々な機材と比較もしやすいため、何故 alpha compressor なのか?という部分についても、研究が進められるので非常に有用です。 さて、そのalpha compressorの素晴らしさは、 未来感覚溢れる外観からも感じ取ることが出来ますが、何と言ってもその音でしょう。コンプレッサーとしては非常に設定機能数が多いので、最初elysiaの本社で見たときには正直うろたえました(笑)。 想像してみてください。elysiaの本社で、CEOのRubenとDominikが見守る中、たった数分でこの機材を理解し、使いこなし、そしてエンドーサーになれるか否かをジャッジメントをされるという状況は、相当に厳しいものがありました。結果として、elysiaとの関係を深めることができたのですが、良い機材であることは認識できましたが、無我夢中過ぎてその時のことはよく覚えていないというのが本音です。 そして、1年が過ぎて今に至るわけですが、ゆっくりと機材の流れを理解すると、その素晴らしい哲学に触れることができ心躍ります。 先ず機材について、色々なインプレッションというものがありますが、出音が良いとか、前に出てくるとか、機材を通すだけで音が変わるとか・・・そういう類のものではなくて、もっと芸術的に表現できる要素がこの機材には随所に見られます。 先ず何と言っても音色です。非常に美しい音色を持ち合わせており、この機材を通してcompressを掛けていった時に、音を潰しているというのではなく、alpha compressorが持ち合わせている哲学を通して、音色が形成されていくという表現のほうが正しいかと思います。特にM/Sモードでは、空間美を非常に優雅に表現し、豊かなステレオイメージを作り上げると共に、ミッドのサウンドにおいても決して色合いが薄くなってしまったり、変に誇張しすぎた原色系に近い音になることもありません。これは正にラージフォーマットでしか可能になりえないサウンド・メイクであり、音楽史において3大Bを生み出

僕がアビーロードスタジオとスターリングスタジオに競り勝てた理由

  皆様こんにちは。 さて、今回は少し挑戦的な題名で始めさせて頂くブログですが、やっと解禁できる内容でも有るので、思い切った題名にさせて頂きました。 上の動画は、ドイツにおける2018ワールドカップの公式曲で、僕がマスタリングを担当しました。元々は演奏しているアーティストの楽曲を担当させてもらい、今年の5月にヨーロッパチャートで7位を獲得し、その付き合いの延長線上で声をかけてもらったという仕事でした。 このDie Denkazというドイツの二人組における「German Rap」というスタイルの楽曲は、グループのStefanが楽曲を積極的に書き、更にプロデュースも自ら行うというスタイルを持っています。 そのStefanから、 『今ワールドカップの曲を担当しているのだけれど、ラジオで流すと酷い音なんだ。なんとかならないかな?』 という相談を持ちかけられたことが事の発端でした。そして、 『君のマスタリングも聴いてみたいんだけれど、アビーロードにもスターリングにもそしてドイツのUleiのところでもマスタリングしてみて、一番良いと思えるものを採用する予定だよ』 との一言が付け加えられていました。常にコンペすること自体は慣れていますし、世界中から送られてくる音源には、ある一定の量で 『アビーロード、スターリング、メトロポリスはこういう感じだった』 という一文が付け加えられています。また他にはデイブ・コリンズやマオロ・アッペルバウム、トム・ウォズニック、その他ユニバーサルスタジオやロシア、中央ヨーロッパ辺りのスタジオなどが比較対象として述べられることが多々あります。 もっとも多くのマスタリングエンジニアやスタジオは、Facebookで繋がっていることが多く、見たことのある名前ばかりであることも確かですし、世界と競争するということは、こういう激烈な争いに勝利しなければ生き残れないことでも有るわけですから、当然と言えば当然です。 それでこのワールドカップの曲の場合は、テレビ局が付いているということもあり、予算がかなり潤沢であったのでしょう、4者を比較して競り勝ったところを採用という形式をとっていました。 声を掛けられた側としては、ギャランティの支払い云々はもう度外視の状況で、自らの音で何

世界と日本の音色の違い

皆様こんにちは。 常に環境は変化しますが、更に最近は刺激の多い毎日で、私自身も大きく夢を育むことが出来ています。 さて、そんな毎日の中ですが、機材や音作りに関するご質問を多々頂戴しますので、今回のブログ記事に交えましてご回答をしていきたいと思います。 今回は、音作りにおける『耳』をどう養うのか?という箇所に照準を当ててみたいと思います。機材を導入する折、またその導入した機材をどういう方向性で扱っていくのか?もしくはそもそも自らのスタジオ内で、どういう音を目指すのか?目指した先に、更に求められるものは何なのか?この辺りを共に考慮してみましょう。 私の仕事環境は、既にご存知いただいているかと存じます。昨今流行りのOnline Mastering & Mixing(海外では、Remote Masteringなどと呼ばれています)を用い、世界中から音源制作を受注しています。国に関しては、最近はもう全くもってのボーダーレスという状況になりました。着手した折には、アメリカやヨーロッパが多かったのですが、最近では東南アジアから中国・韓国、加えてドバイを中心とした中東やインドを筆頭に西アジア諸国、そしてアフリカまでもがアクセスを頂く状況です。ここまで来ると、所謂全世界という言葉が似合うかと思いますが、それと同時に内外価格差や物価の違いも顕著に感じる仕事でもあります。先日はネパールからデビューする新人のマスタリングを依頼された折、当方で定める世界標準の額面を提示したところ、彼らの月収だという回答がありましたが、そのまま依頼を受けたこともありました。 しかしこの内外価格差の激しいネパールから送られてきた音源は、かなりのレベルで作られていたことを記憶しています。同じように物価の低い傾向にあるアフリカも、音質のレベルというものになると非常にクォリティが高く、所謂グローバルスタンダードに所属する音質です。現代の音楽制作環境においては、様々に事情は有るのかもしれませんが、それでも一定の基準というものにどの国も準拠してくる傾向というものを感じます。 それと対象的なのが日本の音楽制作、並びにスタジオワークです。簡単に言えば、世界から送られてくる音源とは異なり、唯一無二の方向性で作られています。巷で言われる、 『洋楽とJ-POPの音質の違い』 というものは、むしろ

新しいマスタリングチェインとデジタル環境

やっと形になったマスタリング・チェインの一部 新しいマスタリングチェインが、一部完成しました。 今までも、そしてこれからもそうですが、基本的に僕の姿勢というものは、最先端の技術を追い求め、そして常に更新される新たなサウンドを作り込んで行くことに違いないかと思います。そうした姿勢の中で、機材構築をしていくことも、そのエンジニアのセンスと才能がと最も表現されるところでもあり、その手腕如何で次のステージに進むことが出来るか否かを問われる部分でもあります。音色のベースを何処に置き、そして自らの感性と技術をどういう形で活かしていくのかを考慮する折、機材のあり方というものが非常に重要になります。 特にマスタリングの世界は、ドイツ勢を中心とするメーカーの躍進が凄まじく、新しい世界観をものすごいスピードと、最新の哲学を構築して一気に放出するという手法が取られています。特にエンドーサー契約を持つSPL社は、間違いなく現在のマスタリング機材におけるキングであり、どこのメーカーも追い付けない素晴らしくもエグいくらいの機材たちをリリースしてきています。 またもう少し異なる視点では、同じくエンドーサー契約を持つBettermaker社が、プラグインで各セクションの機能を弄れる機材をリリースしてきていますが、そのプラグインでの操作という以上に、各ファンクションの哲学と、全く異なる世界観を演出することの出来るM/S機能を持ち合わせたEQを発表してきました。 この辺りの機材の導入は、約1年間を掛けてチェイン全体を見渡しながら、 『自分は一体どのような哲学で音を構築し、そしてどんな音色を奏でたいのか?』 という自問自答を繰り返しながら、十分に納得できた段階で導入を繰り返しました。また、EQセクションには更に Costum Audio Germany HDE250A が既に導入済みであり、同じくM/S機能を持ち合わせているEQでありながら、非常に素直なBoostが可能なEQとして、異なる視点からマスタリングに入ることが出来るシステムを構築することが出来ました。この後は、SPL社を中心としながらマスタリング・コンソールの導入とルーターの導入を行い、更には真空管のコンプレッサーを先ずは一つ入れようと考えています。 大分形になってきたマスタリングセクションですが、アイディアは半

SPL マスタリングコンソールと共にルーターを発表。

SPLの快進撃が止まりません。 マスタリングコンソールであるDMCを発表した折には、その構想自体を1年前には聞かされており、そして昨年の11月には実機を触る機会も与えられました。その折に思ったことは、新しい機能は追加されているけれども、これであればMaselecの方が上であると感じました。唯一勝るとすればSPLの音でしょうが、幾重にも機材を使い分けるマスタリングエンジニアたちに、音だけで勝負するのは難しいのではないかな・・・などと感じたものです。欲しい機能は圧倒的にMaselecにインストールされており、特に機材を繋ぐことで発生する、位相を最小限に抑えるインサート機能は魅力的です。他にもフィルターや、音量バランスを整える機能も充実しており、流石に世界を制覇しただけのことはあると、逆にMaselecの存在を大きく感じてしまったものです(エンドーサーがこれじゃ駄目ですね(笑))。 が、しかし、今回のルーターの発表で、SPLの考えるマスタリングコンソールの全体像が映し出されたわけで、これは世界のどのメーカーも、これに勝る機材を発表することは、ほぼ不可能になったと言えるでしょう。音は勿論、機能においても優位性が圧倒的すぎて、たった1人で出来レースを戦っている様相を呈してきました。 ビデオマニアルがあるので、御覧ください。 https://www.facebook.com/spl.info/videos/2738724099486920/?__xts__[0]=68.ARBtOng0--0z3EOe-iEaD6L5IZP6Uk_d5KYV4EENwTMaL9cli3mdXvBC1fBS0-NN28SXV9LD8jHUNnEX8F0BjfeXAyXXqPNC9XhpEi4SH8Le5JVdeQAZqfiGP_Yi3bb8TiRn_cLaCidact6YBMFUb3H2yIPOVCb3KyHCfN9S5EggatgDYdKlLyuzX56ovWApxpN5tq7BEtrWIzXZOfWC3_x12n3udsQXPlAF-xw&__tn__=H-R デジタル・ルーターの構想は、昨年マスタリング・コンソールを触らせてもらった折に聞いていましたが、本当にこんな事ができるのか?と思えるほどに複雑な回路のはずです。通常は1対1で纏め上げてしま

SPL社がニューリリースした、150dBのダイナミックレンジを誇るマイクプリアンプCrescendoを導入

皆様こんにちは。音楽業界は繁忙期を迎え、物凄く多忙な日々を過ごしております。ヨーロッパに11月終わりに行くはずでしたが、忙しすぎて延期となりました。 しかし、その忙しさを心の底から楽しんでいます。趣味が仕事、仕事が趣味の身ですので、クライアントから音について相談され、それを様々な視点からプロデュースして、最終的には現実の世界に理想の音を持ってくるという作業は、いくらやっても終わりのない世界ですし、僕の天職だと感じています。 僕の場合は日本でエンジニアリングは習っていないし、欧米メーカーと直接のエンドーサー契約なので、正に世界の最先端の音に触れ、誰よりも自由な発想を用いて、世界の音を牽引していく構図をデザインします。この自由な発想こそが、これからのサウンドプロデュース、エンジニアリングに求められていることで、国内が世界の最先端から20年は遅れている現状を考える時、無くてはならない感性だとも思っています。 さて、前置きはこれくらいにしておいて、その世界最先端なる物が何であるのかという一例を示したいと思います。 昨年の今頃だったかな・・・SPL社のサーシャの元を訪ね、一緒に湖のほとりでステーキを食べたときのことです。写真があったかな・・・今のところ、世界で一番美味しいステーキだと思っているのですが・・・ ありました。ベルギーとオランダの国境まで10分ほどで行けてしまう湖のほとりで、サーシャと食事をしながら、色々と語り合いました。その折に、 『ねえ、あの120vテクノロジーを、マイクプリアンプに転用できないの?』 という会話が、このCrescendoの始まりでした。その折彼は、 『考えておくよ』 とだけ言ってくれ、何も進展がないまま半年が過ぎた頃に、いきなり構想がある旨をメールで伝えられ、プロトタイプがFacebookページにアップされ、あっという間に製品化されることを知りました。そして僕の手元に渡されたのは、エンドーサーとして2番目の機材でした。最も早くAESショーと共に渡されたのはUrei Tropetsで、彼はサイモン・フィリップスのミキシングなどを手がけている、デュッセルドルフのエンドーサーです。つまりは、SPL社にとって、外国勢としては最初の1台を僕に渡してくれたことになり、段々とエンドーサーの中でも地位を上げることが出来ている

Bettermaker Mastering EQ

皆様こんにちは。 さて、最近はライブレコーディングの部門が立ち上がり、本格的に会場でのレコーディングがスタートしたことで、そちら寄りの機材を相当数導入しています。 そんな合間を縫って、何とか導入できたのがBettermakerがリリースしてきた、Mastering EQです。232P MKⅡで既に実績のある同社ですが、CEOのMarekから聞かされていた、そのフィロソフィーたるやかなりのものでしたので、僕としては大いに期待値を膨らませてこの機材の到着を待っていました。 既に幾つかの作品で使用してみましたが、溜息が出るような素晴らしいサウンドを創り上げてきます。特にこれまでの常識を覆した、パッシブとパラレルの同居、更には全てのモードにはM/Sを用いることが出来、これ1台で相当な音作りが可能なはずです。ルーティングについては楽曲ごとに異なるので、一重には言えないところがあるのですが、僕ならば1st EQとして用いるか、若しくは一番最初にコンプレッサーを噛ませて、質感を創り上げた後に、その直下にこのEQを置き積極的に音作りを行うかと思います。 色々な考え方があるかとは思いますが、HPフィルターも含まれていますので、パッシブでブーストした低音側を、HPフィルターで美しく整えていくという手もあります。更には最終弾にもう一つEQを噛ませて、Mastering EQとHPフィルターで創り上げた低音部を、更にブラッシュアップするという手もあるかと思います。 例えばこういう形を取ります。Bettermaker Mastering EQの下にSPL PQを用い、積極的にブーストしたサウンドを、今度は120vテクノロジーを用いるダイナミックレンジの広いPQで受け止め、更にカットやブーストでブラッシュアップするという手法もあります。 この辺りの構成は、かなり進んだ考え方を持ち合わせており、世界の最先端を行く音作りと言ってもよいかと思います。 僕も参加している世界的なマスタリングエンジニアたちの集うFacebookページでは、ガンズ・アンド・ローゼズなどのマスタリングを施しているMaorも、 『俺のも今道中だぜ』 などコメントをくれ、その他には、Bob Katzさんもメッセージをくれ、 『実際に使ってみた感想は?』 などなど、世界中で話題沸騰中という感が

SPLがリリースしたばかりの Crescendo (マイクプリアンプ)導入

皆様こんにちは。 ブログを再開しまして、意外と皆様から反応を頂戴した次第でして、とても元気が出ました。やはり読んでいて下さる皆様あってのブログですので、こうした発信の場はとても大切だと感じていますし、今後のビジョンを明確化していく意味でも良い場だと改めて認識を新たにいたしました。 さて、ドイツのSPL社がUSで開催されていたAESショーに合わせて、新しくリリースした機材を、早速にうちのスタジオでは運用が始まりました。昨週の真ん中に受け取ったので、正にAESショーのど真ん中で運用が開始できたことは、正にエンドーサーの醍醐味であると共に、日本にスタジオを構えながら、世界でファーストロットとなる機材を入れていくことは、国内のスタジオにおける活性化という意味からしても、大きな意味を持ち合わせていると感じています。兎角日本における情報や機材事情というものは、エンドーサーからすると3年~5年ほど遅れるイメージを持っています。 例えばこのCrescendoは、昨年にマーケティングマネージャーのサーシャ・フロッケンと、SPL本社近くのレストランでステーキを食べながら、 『120vのテクノロジーを、マイクプリアンプに併用しないの?きっと人気出ると思うよ』 と語ったことから、この機材の企画はスタートしています。 そして一気に1年間でここまでの形になるわけでして、企画から発表までが1年、そして日本のディストリビューターが情報をAESショーで得て、その後体制を整えて国内に発表するとなると、約2年~3年遅れてきます。そして少しづつ日本市場へも認識が出てきて・・・となれば、平気で5年のブランクが世界と出来てしまうという構図を昔から感じてはいました。 そういう意味で、僕の場合は世界のメーカーと直接本国公式エンドーサー契約を交わしているので、これを単に自分一人のものとして固執するのではなく、意気込みのある大きな視野で音楽に接している方々と共有したいとも思っています。実際に若い大学生が、僕にアクセスしてきてくれ、熱心に通う姿を見てアシスタントとして入ってもらうことを決め、彼には今後10年を掛けて本国の公式エンドーサーになれるよう、実績を積んでもらいたい旨も伝えています。閉鎖的であったり、アングラで近寄り難い雰囲気もある音響・スタジオワークですが、僕はそういうことでは

日本で230vの運用について

電源において200vは簡単に引くことのできる国内ですが、ヨーロッパ製が大多数を占めるスタジオ機材においては230vがメインのため、電圧が足りない状況に陥ります。故に200vを減圧して115vで使用するケースが殆どと言え、この200vをなんとかして230vで運用してみたいと思った方は多いはずです。 もっとも僕もその一人で、アメリカで聴くサウンドとヨーロッパで聴くサウンドの違いというものは、双方の国に行くたびに感じていたことでした。勿論考え方が根本的に異なる両者ですので、違いが出て当然なのですが、機材の違いでもなく録られる音質の違いでもなく、何か本当に根っこの部分でヨーロッパとアメリカの違いというものを感じていました。僕も手っ取り早いので、115vは直ぐ様導入して100vとは異なる音質を手に入れることはできていました。 ここで電源やケーブル、タップ類の話になる前提として、絶対的に根本的な考え方が根底で出来ていること、そして自らの耳を常に疑われる、非常にレベルの高いクライアントたちから、ガンガンにクレームを言われながら鍛え上げられている柔軟な感性を持ち合わせていること、そして世界中の新曲に触れる機会に恵まれていることが絶対条件になります。自で 『 自分の作る音ならば間違いない、俺の価値観は絶対だ』 と思ったり考えているのであれば、その人は決して上に突き抜けることはありません。その考え方で、どうにかなってしまうクライアントしか仕事を受けられないからです。最高レベルに行き着くこともなく、成長はそこで止まります。適正な報酬、最高レベルでの感性と技術を売り込めば、それなりに自らの感性にも技術にも自信のあるクライアントからオファーを貰うことになります。そしてガチンコで意見を出し合いながら音を構築していくわけで、その場では必ず意見の衝突が起きます。その衝突を糧としながら、自らの感性や視野を育てていくことになり、そうしたクライアントと年に10人も出逢えばかなり揉まれます。自らの価値観など無に等しいくらいに否定され、揉みに揉まれて最後に残った価値観こそが自らのものとして最終的に残ることになるでしょう。また痛いのは、海外からのオーダーで、言語が全くわからない曲があったりします。例えばドイツ語やイタリア語、スロバキア語やウルド語(インド・パキスタン周辺の公用語・・・なのかな)が用いら

Bettermaker Mastering EQ

このブログは、一体どなたにご覧頂くのだろうか・・・と考えておりましたが、以外にこちらからお問い合わせなどを頂くようになり、僕の文面でも喜んで頂けるならばと再度思いを新たにしました。 さて、今回はエンドース元であるポーランドのBettermaker Mastering EQを扱ってみたいと思います。まだ届いていないので、希望的観測も含めながらのレビューとなります。 既にエンドースメント契約も8社に上り、日々新しい情報やアップデートに目を白黒させています。日本で想像されている以上に、世界の進歩というものは物凄いスピードで動いています。日本は大凡僕の感覚からすると3世代以上出遅れていて、機材の真新しさという以上に、音に対しての考え方そのものがついていけてないように思えます。そしてその最先端と定義できるであろうBettermakerの存在は、僕にとっても非常に大きな意味を持ち合わせています。 上の映像はCEOのMarekがニューリリースのMastering EQについて、説明を行っている映像ですが、この機材、最新鋭らしく美味しいところを全部持ち合わせているようなEQです。Pultec EQ と4バンドのパラメトリックが同居していることもそうですが、その上M/Sモードも持ち合わせており、いわばてんこ盛りの機能を持ち合わせています。その上、M/Sモードの切替があること自体珍しいのに、映像から見受けられる内容として、バンドや機能ごとにM/Sを切り替えられるとのことで、これは願ってもない機能でした。 こうした発想が物凄く、その上磨き抜かれたHi-Fiサウンドですから、最新の音を扱う機会が多いのであれば、その魅力というものを存分に感じ取れるはずです。 それでは最新の音とはどういうものなのか?その定義とは?という問いが聴こえてきそうです。僕の場合は、レコーディングはクラシックが主流で、時々ジャズも担当する言わばアコースティック楽器を得意としています。しかし、ミキシング&マスタリングになると、世界各国からの受注ということになるので、クラシックからハードロックまでジャンルを問わず担当します。その中で今年は嬉しいことに、ドイツのラップ・ヒップホップグループを担当し、ヨーロッパチャート7位、アワードにもノミネートにもされています。 そんな環境の中で最先端を最も早く感じ取るの

ここ1年の動き

昨年の11月に投稿してから、1年弱が経過しました。こちらのブログは、スタジオワークの思い出として、とっておくかな・・・と思っていましたが、随分とお問い合わせを頂戴いたしまして、更新を継続しようと思いました。 さて、この10ヶ月間、波はありましたが情熱を保って行く上で、素晴らしい仕事や出会いをたくさん経験しました。今ではヨーロッパを中心に、本国公式エンドースメント契約は8社にも上り、機材がバッティングしてしまうような場合でも、快くプレゼンテーションを頂戴しています。 そんな中、どの仕事も大切ですが、印象深かったものとしては、今年5月にドイツのDie Denkazと始まったパートナーシップです。彼らと初の仕事で、いきなりヨーロッパチャート7位を獲得しました。 様々なメディアでミュージックビデオが配信され、再生回数300万回と言われています。Spotifyでは、あっという間にチャートインしてしまい、市場規模の大きさに驚かされました。 そしてそして、彼らが担当したドイツ・ワールドカップの公式ソングにも参加させてもらい、特別バージョンとしてテレビ局が日本選手をフューチャーした映像も公開してくれました。 こんなアグレッシブな2018上半期を過ごすことができました。 今年度中に、ヨーロッパでアワードを取る目標を立てていましたが、早速にノミネートされた楽曲を担当できたことは、大きな喜びです。 これらの楽曲で活躍している機材も、少し紹介してみたいと思います。どれも日本には入ってきておらず、メーカーから直接のエンドースメント、及びヨーロッパの代理店を経由して入手しています。ではまずEQから。 下段左側が Custom Audio Germany、右側がSPL PQです。この辺りをメインに、各パートを攻めていく感じでしょうか。 API500シリーズの機材ですが、味付けによく用いています。M/Sのステレオイメージに便利なelysia-Karactor、トランジェントデザインに強力な音色づくりを可能とするelysia-nvelope、そしてここぞというときにインパクトを与えてくれるRoger Shultのフィルターです。 あとはコンプレッサーやリミッターも勿論用いていますが、「音色づくり」という部分では、この辺りが活躍します。あとは、バンドコンプ