やっと形になったマスタリング・チェインの一部
新しいマスタリングチェインが、一部完成しました。
今までも、そしてこれからもそうですが、基本的に僕の姿勢というものは、最先端の技術を追い求め、そして常に更新される新たなサウンドを作り込んで行くことに違いないかと思います。そうした姿勢の中で、機材構築をしていくことも、そのエンジニアのセンスと才能がと最も表現されるところでもあり、その手腕如何で次のステージに進むことが出来るか否かを問われる部分でもあります。音色のベースを何処に置き、そして自らの感性と技術をどういう形で活かしていくのかを考慮する折、機材のあり方というものが非常に重要になります。
特にマスタリングの世界は、ドイツ勢を中心とするメーカーの躍進が凄まじく、新しい世界観をものすごいスピードと、最新の哲学を構築して一気に放出するという手法が取られています。特にエンドーサー契約を持つSPL社は、間違いなく現在のマスタリング機材におけるキングであり、どこのメーカーも追い付けない素晴らしくもエグいくらいの機材たちをリリースしてきています。
またもう少し異なる視点では、同じくエンドーサー契約を持つBettermaker社が、プラグインで各セクションの機能を弄れる機材をリリースしてきていますが、そのプラグインでの操作という以上に、各ファンクションの哲学と、全く異なる世界観を演出することの出来るM/S機能を持ち合わせたEQを発表してきました。
この辺りの機材の導入は、約1年間を掛けてチェイン全体を見渡しながら、
『自分は一体どのような哲学で音を構築し、そしてどんな音色を奏でたいのか?』
という自問自答を繰り返しながら、十分に納得できた段階で導入を繰り返しました。また、EQセクションには更に Costum Audio Germany HDE250A が既に導入済みであり、同じくM/S機能を持ち合わせているEQでありながら、非常に素直なBoostが可能なEQとして、異なる視点からマスタリングに入ることが出来るシステムを構築することが出来ました。この後は、SPL社を中心としながらマスタリング・コンソールの導入とルーターの導入を行い、更には真空管のコンプレッサーを先ずは一つ入れようと考えています。
大分形になってきたマスタリングセクションですが、アイディアは半永久的にあるでしょうし、メーカー側も常に新しいことを考えてくるはずですから、相乗効果として飛躍的に成長できる環境というものも同時に手に入れることができています。
テスト中のPCIeカードをボックスにセットした、Thunderboltのシステム
その次の話題としては、デジタル環境です。
マスタリングセクションと共に、ライブレコーディングの部署を立ち上げたので、相当に考慮する案件が増えました。実際に多チャンネルを安定的に運用しようとすると、相当に考えなければならない要素とともに、音に拘りながらの安定動作というものが、かなりのハードルになることは間違いありません。
それで今回考慮した案件としては、候補としてPCIe、Thunderbolt3、USB3.1、USB3.0、Ethernet、この辺りに絞られる状況になりました。マスタリングのように2chのIn/outであれば、USB2.0でも十分な状況なのですが、60ch若しくはそれ以上を扱おうとすると、確実に能力不足になることは間違いありません。更に今までも音質テストをした折に、USB3.0とUSB3.1、或いはThunderboltやPCIeでは確実に音が異なることは体験してきていますので、先ずは、USB3.0以下(5GbE以下の通信速度)は却下ということになりました。Ethernetも10GbE対応でなければ、既に使い物にならなく、あのMergingが用いているRavenna も運用方法によっては既に時代遅れの様相を呈してきています。結局は、PCIe(40GbE)、Thunderbolt3(40GbE)、USB3.1(10GbE)、Ethernet(10GbE)これらをどう運用するかに絞られました。基本的にはPCIeが最も好きな規格であり、汎用性を求めるのであればThunderbolt3、そしてDanteとの共存を昨今のライブレコーディングでは考えることになるので、Ethernetをプラスした3種類で運用を行うことで決定しました。PCの体制としては3台で、DAWはSEQUOIAとSamplitudeを中核として全体を纏め上げます。DanteとMADIを上手く混ぜわせるために、バックアップも双方で対応できる体制を取り、更には昨今人気のあるストリーミング配信の折には、一切のプラグインをDAWに挿すことなく、RMEのRaydat経由で発せられる各トラックを、RMEのDSPソフトであるTotal Mixでサブミックスまで仕上げ、最終的にはNEVE8816と8804のセットを経由しapi500シリーズのEQやコンプレッサーをバスミックスに入れて、マスタリングを施し最終の音を作り上げ配信するという手法を選びました。
これらのチェイン全体は、スタジオの運用においても非常に有用に活用できると共に、トラブルなどの回避に対しても強固なシステムを構築させてくれます。
散々ここまで容量=音質という結論で話を持ってきているのですが、2ミックスに関してはまたちょっと別物のところがあります。ワードクロックでありDDコンバーターでもあるMUTEC MC-3 USBは、フィールドレコーディングでもワードクロックとして常に用いていますが、このMC-3 USBはDDコンバーターとして半端でないポテンシャルを持ち合わせています。USB2.0の音など全くたいしたことないと思っていたのですが、MUTECの場合は別物です。PCIeのRME Raydatを使用する気がなくなるほどに、素晴らしい音を持ち合わせています。チップなどのチューニング如何によるところも大きいのかと思いますが、様々なケース・スタディも踏まえ、結局は自分の耳で一つ一つ好みの機材を探していくしか無いのかと思います。
オススメは?という声が聞こえてきそうですので、敢えて挙げるのであれば、コストパフォーマンスとバランス、そして音質を網羅できるのはMADIシステムです。その場合、DDコンバーターはMarian Seraph、そしてAD/DAコンバーターはSPLのMadison、このセットが最も良いと感じています。双方にMADI以外のDDコンバートを出来るシステムを持ち合わせていないので、余分なコストは一切かけず正に本業に特化したシステムと言えます。必要があればエクステンド出来るわけで、先ずは核となるシステムを組むのであれば、MADIだけでも十分なはずです。
しかしこの構成そのものは、正にドイツ人がクラシック音楽を軸として耳が構成されているように、原音そのものしか再現してくれません。ですので、エンジニア側の手腕が思い切り表面化するわけで、正直なところ最初は戸惑うかと思います。昨今のAD/DAコンバーターは、様々なものが付き過ぎていて、音もチューニングされてきていることから、誰でもそれなりに纏まってしまう傾向にあります。
しかし、本物を作りたいのであれば、Marian+SPL Madisonのセットはお薦めです。本当に何も機能はついていませんし、音質も何もなさ過ぎるくらいに広大な可能性のみを思わせる音がします。
我こそはと思う方は、チャレンジしてみては如何でしょうか?
さて、今回はここまでです。機材コンサルティングやスタジオコンサルティングは副業なのですが、意外や意外、皆様からすごく人気のあるサービスになりつつあります。ルームチューニングもかなりの割合でお仕事を頂いており、私の本業から派生して、経験値を基にしたシステムのご提案という、趣味であり仕事である分野でもお声掛け頂けることを、非常に嬉しく思っております。
お気軽にお声掛けください。
Hiro's Mixing & Mastering / http://www.hirotoshi-furuya.com/shop
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