皆様こんにちは。
さて、今回は少し挑戦的な題名で始めさせて頂くブログですが、やっと解禁できる内容でも有るので、思い切った題名にさせて頂きました。
上の動画は、ドイツにおける2018ワールドカップの公式曲で、僕がマスタリングを担当しました。元々は演奏しているアーティストの楽曲を担当させてもらい、今年の5月にヨーロッパチャートで7位を獲得し、その付き合いの延長線上で声をかけてもらったという仕事でした。 このDie Denkazというドイツの二人組における「German Rap」というスタイルの楽曲は、グループのStefanが楽曲を積極的に書き、更にプロデュースも自ら行うというスタイルを持っています。
そのStefanから、
『今ワールドカップの曲を担当しているのだけれど、ラジオで流すと酷い音なんだ。なんとかならないかな?』
という相談を持ちかけられたことが事の発端でした。そして、
『君のマスタリングも聴いてみたいんだけれど、アビーロードにもスターリングにもそしてドイツのUleiのところでもマスタリングしてみて、一番良いと思えるものを採用する予定だよ』
との一言が付け加えられていました。常にコンペすること自体は慣れていますし、世界中から送られてくる音源には、ある一定の量で
『アビーロード、スターリング、メトロポリスはこういう感じだった』
という一文が付け加えられています。また他にはデイブ・コリンズやマオロ・アッペルバウム、トム・ウォズニック、その他ユニバーサルスタジオやロシア、中央ヨーロッパ辺りのスタジオなどが比較対象として述べられることが多々あります。
もっとも多くのマスタリングエンジニアやスタジオは、Facebookで繋がっていることが多く、見たことのある名前ばかりであることも確かですし、世界と競争するということは、こういう激烈な争いに勝利しなければ生き残れないことでも有るわけですから、当然と言えば当然です。
それでこのワールドカップの曲の場合は、テレビ局が付いているということもあり、予算がかなり潤沢であったのでしょう、4者を比較して競り勝ったところを採用という形式をとっていました。
声を掛けられた側としては、ギャランティの支払い云々はもう度外視の状況で、自らの音で何処までの勝負ができるのか?という視点でしか仕事ができなくなります。ワールドカップの、しかも自国ではなくヨーロッパの中心的立場を持つドイツの楽曲を、ドイツ、イギリス、アメリカのマスタリングスタジオと競るというチャンスは、そう簡単に得ることが出来ないことは確かです。幸い僕の場合は、以前の楽曲を担当していたこともあり、それぞれのマスタリングスタジオが行っていた音源を聴かせてもらうことが出来ました。これは一つのアドバンテージでしょう。同時に、どのスタジオがどのような音で勝負しているのかも聴くことが出来、非常に参考になりました。
またこれは一つのケース・スタディであり、これで周囲のスタジオが何をしているのかを理解できたとは言えないでしょう。これ以上のことも、これ以下のことも有るでしょうし、誰が施したマスタリングなのかも聞いていませんので、全てにおいて、またたった一曲での話になるので、完全勝利というわけではないのは分かっています。
しかし、僕の感じたこの競争では、明らかに英語圏であるイギリス、アメリカ勢は積極的に音質の着色、また変化というものを与える方式をとっていないことは明白でした。ドイツのUleiがかなり攻めていましたが(UleiはSPLのエンドーサーとして同僚)、僕はそこに対して更に若々しさと、先進性というエッセンスを足して勝負に出ました。間違いなく自分は新参者ですし、失うものなど何もない自分としては、考え得る最も進んでいる音というものを提供しました。
それが結果的に採用という形で競り勝てたことになったのですが、そこには
『世界の第一線で勝負したい』
という思いと、
『同じ人間がやっているのに、何が違うのか?』
という思いから、徹底的に音を追求してきたところにあると思います。世界で勝負することを前提とすると、先ずは世界中の誰もが知るアーティストを担当している必要があります。また、度肝を抜かれるほどの実績も必要で、これがエンドーサーとしての立ち位置を得ることになり、そのエンドーサーとしての立ち位置が、世界の音を把握させるところまで成長させてくれることも確かです。 そして、こうしたとてつもなく大きな仕事に対して声をかけられた時、一気にそれまで溜め込んだ力を放出させるパワーにも恵まれることとなります。
どうやって世界に競り勝ったなどという理屈は殆どなく、兎に角音を極めることが好きで好きでやっていたら、知らないうちにここまで来ていたというところもあります。
僕のマスタリング、音作りは世界的に見ても色合いも音圧も強いかと思います。それは単に音楽が好きで好きで追求してきた、情熱の結晶なのだと思います。
競合相手、特に歴史あるスタジオと競争になった場合、必要以上に相手を大きく見る必要はありません。相手も同じ人間、一体何が違うのかを分析し、そして自らが何らかの形で世界で最も優れている部分を持ち、最も得意な部分があるのかを把握しておく必要もあるでしょう。相手に学ぶことはある程度しても、それ以上の崇拝行為は、そこに一つの壁を作ってしまい、永遠に渡って彼らを抜くことは出来なくさせるでしょう。
金魚鉢の大きさに、金魚の成長が合わせた大きさになるように、自らの思いの大きさが、自らの活動の大きさに比例することは、これまでの経験で嫌というほど味わっています。
僕の場合は、小さく纏まろうというモチベーションではなかったので、世界と激しく競争することで自らを鼓舞し、成長させ、徹底的にやり込む姿勢というものを選びました。根底には、心からの情熱が支えになっていることは間違いありません。
Hiro's Mixing & Mastering / http://www.hirotoshi-furuya.com/shop
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