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DMSC Musiker Awards 受賞。。。だからこそ考える、日本の音楽業界。


サウンド・プロデュース、マスタリングのクライアントであり担当アーティストであるドイツのDie Denkazが、本国でDMSC Musiker Awardsに輝きました。
今年彼らがレコード会社と契約し、そして第一弾としてマスタリングを担当させて頂いた”Pfusch am Bau"がヨーロッパチャート7位にランクインし、そしてそのままの勢いでアワードの受賞となりました。
今年の頭に立てた”ヨーロッパでのアワード受賞”というものが現実になり、しかも自分が得意と思えないようなジャンルのマスタリングを担当しての快挙で、何とも複雑ではありますが、勿論嬉しさでいっぱいです。
国内ではこうした実績を背景にしながらお話をさせて頂くケースもありますが、まだまだ浸透とは遠い状況にあり、欧米から30~50年は遅れているであろう国内の現状をどう説明していくのかも自分の責務だと思っています。
その視点に立った折に考えることは、まず国内の音楽業界全体に共通していることとして、健全化というものが第一に上がるのではないかと思っています。健全化と言っても様々な物があるかと思いますが、簡単に言えば、

『楽しく明るく、老若男女だれもが楽しめる素敵な世界』

に生まれ変わらなければ、現在の国内における衰退を止めることは出来ないのではないかと思います。威嚇、嫉妬、嫉み、傲慢、無知、その他様々な不健全な世界観で満ちている音楽の世界は、一度本物の実力主義の世界観へと変貌を遂げなければならないと思えてなりません。 本物の実力主義とは、実績やそれまでの背景、そして人格のみで業界を牽引する人物たちを選び出す必要があるわけで、通るものを通っていない人物たちが上層部を成せば、それは様々な無理が通り当然不健全な精神で満ちるのは当たり前の成り行きと言えます。
専門的なイメージが先行しすぎてしまい、実際的な実力よりも声が大きいほうが勝ちのような世界観を構成すれば、物凄い優秀な頭脳とアグレッシブなスピード感で新しい世界観を構築してくるグローバルのトップに追い付いていける訳もありません。
そして誠に残念なのが、国内に存在する真に心から音楽を楽しもう、または本当に音楽の世界観が好きで、その世界に没頭している純真な方々が、嫌な思いをされているという事実です。
何故か声が大きい人が勝つこの世界、簡単に言えば優秀な人材の確保も出来ていないがゆえ、成熟することが出来ていないのかと思いますが、その声の大きさに嫌気がさしてらっしゃる方も多く見受けられます。自らもその経験は多数あり、変にこねくり回された理屈と、本物を知らずして本質を見極められないからこそ出てくる変な価値観に翻弄されたことは多々あります。こういう類のものは、経験値として構築されるわけでもなく、単なる嫌な思い出で終止してしまうことは間違いなく、非常に残念としか言いようがありません。

では、本場ではどうなのか?
現在私自身はエンドーサー契約を8社持ち、気難しく高貴なヨーロッパでヒットチャートに楽曲もチャートインし、そしてアワードを獲った外国人である現在、何かしらこちらに矢が飛んでくることはあるのか?
率直な感想としては、全くありません。ヨーロッパやアメリカから尊敬を集めることが出来、一定の地位を確立することも出来ました。そして欧米のライバルたちの反応と姿勢としては、
『お前がそこまで頑張るならば、必ず追い抜いてみせる。絶対に負けない』
というもののみです。正に健全と言える、正しい競争がそこにはあり、賛辞もあれば意見を求められることもあります。
これくらいの大きさが無い限り、永遠に日本の音楽産業が世界に向けて何かしらの影響力を持つことは無いのではないかと思っています。
発言力を与えられた現在だからこそ、私自身は業界自体の健全化というものを掲げたいと思うし、そして捻じ曲げられた価値観の中には、何も生み出さないことを声を大にして主張したいと思っています。
確かに純真で一途に物事を追求する人たちというのは、その業界に長い人からすれば新しい価値観で臨んでくるために扱いにくいでしょう。しかし、その新たな価値観で業界の旧態然としている価値観を更新していかなければ、以前古い体制のまま一向に進歩がありません。いい加減この部分に気づかいないことには、若い人も育たないだろうし何時まで経っても新しい価値観の構築にも移行できません。
実際のところ、世界の第一線で行われている音楽制作は、日本で想像されている以上に先に行っており、殆ど追いつくことが出来ないほどに先行されています。この現状をクリアするには、先程述べた新しい価値観の構築以外に手はないと思っています。それには、若い人たちが心から挑戦したいと思える業界であるとともに、アグレッシブに優秀な人員たちが出入りできる世界でもあるべきです。
一定の経験は積んできたと思いますし、世界に出て通用する日本人のスタジオエンジニア、プロデューサーというのは殆いません。その地位を、今後は業界の再構築という視点から用いていみたいと思っています。

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