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Phonitor xe レビュー

  これまでの投稿で、Phonitor3・Phonitor xと書いてきましたが、ここでPhonitor xeとしての記事も書いておきたいと思います。凡そこれまでの記事で、各機種の説明とサウンドの住み分けと結論は出ているのですが、Phonitor xeをこの3機種の中で位置づけるとすると、最も芸術寄りで美しきサウンドを放つ機材と言えます。これはこれまでにも書いてきたとおりですが、各機材としての立ち位置というものはトレードオフと言えるサウンドテイストを、種別によって双方に補うようなラインナップと言えます。国際エンドーサーである僕としての所感と、各機種の概要とサウンドの方向性は以下の通りです。 Phonitor3:リニアとリアルを最重要視。SPLとしてはスタジオ機材として扱っているが、ジャズやライブ音源、更にはクラシックなどのリスニングには向くと思える。それは演奏における生のリアリティと演奏家たちの息吹を感じ取る芸術鑑賞として、最右翼と考えられるジャンル故に候補として挙がる機材と言えよう。その他のジャンルでも、楽曲のディテイルをダイレクトに感じ取りたい方には、最もお勧めの機材と言える。 Phonitor x:この3機種の中で、最もバランスの良い機材。外部出力端子も持ち合わせ、機能面からも最も汎用性が高いと言える。Phonitor3がリニアとリアルを前面に押し出すのに対し、楽曲内でリアリティは示しつつも、その中には美しさもテイストとして組み入れていることから、極度に強調されたリアリティではなく、楽曲全体の解像度を深めるためのリアリティと捉えられる。リスニング用途としてVGPで6連覇を果たし殿堂入りしていることからも、その立ち位置というものはリスニング機としてハッキリとしているが、スタジオ機材としても非常に優れていると考えている。これは昨今のスタジオ機材とリスニング機材が限りなく融合しようとしている時代背景に等しく、Phonitor xはその代表格と言えよう。美しく楽曲のディテイルをハッキリと映し出すなど、中々ここまでの表現力のある機材が出てこないからこそ、SPLが絶対王者として君臨し続けている証なのであろう。 Phonitor xe:Phonitor xのサウンドを更にリスニング機としての磨きをかけ、楽曲内での凹凸感をよりフラットにしているイメージ。非常にスマート...
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Phonitor x レビュー

僕の中でBest of Headphone Ampと言えば、間違いなくPhonitor xを選びます。最も純度が高く、味付けを排するだけ排したHi-Fiサウンドで、良くぞここまで表現したという機材です。前回の投稿では、Phonitor3からの買い替えということでPhonitor xを選んだわけですが、今回はここにPhonitor xeも含めて話を展開してみたいと思います。 Phonitor xとPhonitor xeの違いというと、外部出力が有るか無いかの違いくらいにも思えるのですが、実際にはそのサウンドの違いというものが最たる違いと言えるかと思います。機能や数値的な違いというもの以上に、その音色を実際に感じ取るということは最も重要で、欧米メーカーの人間たちも数値的な話というものは余り表向き説明されることはなく、もっと対極を成す音色としての在り方というものが話題の中心になることが大半です。この観点から、似たような2機種と思われがちな各機材たちを、具体的に音色の面から説明しなぜ自分にとってはPhonitor xであったのかを明らかにしていきたいと思います。 先の投稿で書きました通り、Phonitor3はリニアとリアルを融合したモデルで、Phonitor xはリニアとリアルは一部残しつつも、より広大なステレオイメージでサウンドを作ってきています。しかしその広大なステレオイメージというもの自体に強調しすぎるような味付けはなく、サウンド内の凸凹もほぼそのまま拾っているイメージです。対してPhonitor xeは、その凸凹を少しフラットにし、美しさの追及へと方向性を走らせている感があり、この箇所が僕にとってはリニアとリアルさがもう一つ欲しいと思えたところでした。 そういう意味で言うと、機能面・サウンド面双方に最もバランスよく思えたのがPhonitor xで、Kii Audioのような究極的なスピーカーと並べてマスタリングを行う際にも、Phonitor xは自身の存在感を抜群に示してくるところがありました。何が抜群かと言うと、何と言っても表現のバランス感覚が最強と思えます。特に何かを強調しているわけではないのに、アタック音や弦が擦れる音、ある種の雑音とも捉えられるボーカルの歯擦音までを、見事なまでに良い意味でも悪い意味でもそのままに映し出してきます。ただPhonitor3と違う...

Phonitor3 レビュー

Phonitor xとPhonitor xeというSPLの顔とも言えるヘッドフォンアンプ2機種に少し隠れる形となりますが、Phonitor3という名機も存在しますのでブログ記事にしておきたいと思います。Phonitor xとPhonitor xeはリスニング寄り、Phonitor3はスタジオ寄りというイメージがあるかと思いますが、僕はあまりその方向性というものは感じていません。何よりも 『どういった音を欲しているのか?』 という論点に集約して議論を展開したいと思うのですが、僕自身が自分のスタジオに導入する機材をスタジオ系とされるPhonitor3から始まり、結局Phonitor xに落ち着いたという経験からも、十分なケーススタディを構築できているかと思いますのでお伝えできたらと思います。 Phonitor3は、ずばりサウンドの方向性をお伝えすると『リニア、リアル』という言葉に集約されるかと思います。かなり楽曲内のディテイルというものを、しっかりとした輪郭を持ってして精度高く表現しようとしているイメージです。こうしたサウンドを求めるのであれば、圧倒的にPhonitor3を選ぶべきかと思います。これは別にスタジオ用ということだけでなく、十分にリスニングとしても対応できると感じており、例えばジャズなどの楽曲をその場のリアリティあるインプロヴィゼーションや、各楽器のエナジーを求めるのであればとても良い選択かと思います。 では何故Phonitor3からPhonitor xへ買い換えたのか?という論点ですが、僕の場合は各楽曲の中のディテイルを細かに聴き分けるというよりは、全体像としての楽曲の完成度を判断する材料にヘッドフォンアンプを使う傾向にあります。スピーカーは1000万円近くの価格が付くようなKii Audio(こちらも国際エンドーサー)のフルコンフィグレーションを使用していますので、Kii Auidoにない要素をPhonitor xに求めています。どちらかというとKii AuidoもHi-Fi Audioとして本国ではプロモーションが行われていますが、かなりリニアかつリアルです。最高に美しいサウンドを奏でますが、正直長時間聴いているのは疲れるような精度の高さがあります。全体像としての楽曲の完成度を感じるための要素は、Kii Audioにもふんだんに含まれるのですが、更なる...

SPL マイクプリアンプCrescendo

  SPLの人気機材の中に、今回もご紹介させて頂くCrescendoがあります。『今回も』という表現は、このCrescendoのリリースに至る過程や、僕のアイディアを採用してもらったという経緯を以前にもそれなりのご紹介をしていたので、今回は実際にそのサウンドそのものについて、実例を用いてご説明していきたいと思います。 上記添付の動画は、僕が世界で大成功を収めたアルバム『 ART OF RICHARD CLAYDERMAN 』の中の一曲です。ピアノを日本にてCrescendoを使ってレコーディングしていますが、ストリングスセクションはサンクトペテルブルグで旧友のマリアに録ってもらったものです。(ロシアが戦争状態に入ってしまい、こうした企画もできなくなってしまったのは残念です) このアルバム全体に走っている哲学というものは、『世界最高のアーティストを集め、世界最先端のサウンドで仕上げ、最高傑作を作る』というものでした。実際参加してくれたアーティストたちはジョン・キャペック(ダイアナ・ロス、TOTO、オリビエ・ニュートンジョンの作曲家)、チャック・サボ(エルトン・ジョンやブライアン・アダムスのドラマー)をはじめ、錚々たるメンバーたちを集めることができ、プロデューサーは僕でしたが、ほぼ現場のアイディアで完成したと言っても良いほどに口を出していません。そして次の世界最先端のサウンドというテーマですが、こちらに関しては僕のみの意見で出来上がっています。これは参加アーティストたちも含め、他のメンバーの誰よりも、国際エンドーサーとしてのキャリアがあったうえで、メーカー側の意図や最先端を生み出すという意味では自分以外の人材を探せないと思っていたところもありました。最高傑作という意味では世界中で大ヒットしてくれたということと、それが最高傑作であるか否かはリンクするかわかりませんが、僕自身がこれ以上のアルバムをもう作れないと思っているところから、少なくとも自分にとっての最高傑作にはなっていると思います。 こうした背景があるのですが、これらを踏まえた上で世界最先端のサウンドとCrescendoがどうリンクして行くのかを述べたいと思います。 現在のマスタリングギアにおいて、SPLは2018年あたりから確固たる地位を築いています。PQに始まりIRONがその後鮮烈なデビューを果たし、そし...

SPL Vitalizer・・・最初の一台に良いと思います。

 大分前に撮影していたSPL Vitalizerの動画が、ようやくアップされましたのでブログでも解説してみたいと思います。 そもそもVitalizerの立ち位置というものが、自分自身使い込んでみるまで良くわからなかったのですが、触ってみれば「ああ、なるほど」と思えるSPLの哲学がありました。昨今の機材の中には、EQやコンプレッサーといった部類にジャンル分けされず、独自のアルゴリズムと呼び名で機能があったりと、個性を強く発揮しないと市場の中で埋没してしまうという傾向があると思います。その個性の源流ともいうべきVitalizerは、1990年代には初代が発売されていましたので、SPLのアイディアが他の機材メーカーへ伝染して行ったと説明した方が良いかと思います。 SPLの場合は、通常のEQもコンプレッサーもラインナップにあるわけで、それを敢えてVitalizerでは楽曲内で必要とされる箇所を全部入りにして機能を圧縮したモデル・・・とでも言いましょうか・・・表現が難しいのですが、SPLの全製品を所有する立場からしても、このVitalizerの魅力というもは良くわかります。 真空管のドライブ量を調整することもできれば、低音の定位をハッキリさせるために用いる Bass Compressor、高音域を輝かせるInstanceまで、その他これ一台でマスターに掛けたい凡その機能は持ち合わせていると言っても良いでしょう。いきなりマスタリング機材を一気に買うことはあまりお勧めできなく、その有用性や可能性を存分に知った後に徐々に機材を増やして行く方向性が良いかと思います。その中の一台として、音の扱い方を知る意味でも本当に良くできた一台だと思います。 また、ミックスバスに掛けるにあたっては、さきほどのご説明でおおよそ網羅されていると思いますが、更にはドラムバスに掛けると非常に良い効果を得られるはずです。昨今のサウンドは、ナチュラルに聴こえる様に極限まで作り込まれます。つまりは、何となく聴いていては何を触っているかわからないほどに、作意の極致ともいうべき作り込みが行われているサウンドが主流です。そうした作意というものが何であるのかを理解する意味でも、先ずは触ってみて欲しい一台です。 各セクションにおける音の変化と、その効果については実際の動画をご覧ください。僕はこのSPLならではのディ...

IGS Audio Tubecore 500 について

 僕としてはもっともっと評価を得ても良いと思っている、Tubecore500について書いてみたいと思います。ノブの量が多く、難しそう・・・と思われているのか、シンプルなOne LAがダントツに人気があるので、Tubecoreの魅力について書いてみたいと思います。 Tubecore500は、その名の通り真空管を用いたコンプレッサーでして、IGS Auidoのフラッグシップモデルです。IGSお得意のリッチテイスト漂う濃密なサウンドは、フラッグシップ故にこれでもかというほどに注ぎ込まれています。そちらに関しては動画を見て頂くとして、更には各セクションの機能の在り方というか、効き具合が僕は非常に好みです。リッチな中にも、 Hold(Threshold)を増して行き、その効き具合というものをAttackとReleaseの振れ幅で調整して行くわけですが、この三つの機能の効き具合と割合が何とも絶妙だと思えるのです。特にReleaseの掛かり方が非常に独特で(IGS Audio全ての機材に共通な概念で、Releaseを如何に上手に使えるかで楽曲クオリティが大きく左右します。ただ、機材によって挙動は全く異なります。)、抑えるのか表に出すのかの意思決定においての裁量が非常に大きいと感じます。 僕は常々、機材の度量の大きさ、自由度の高さ、そして器の大きさというものについて言及してきました。それはユーザー側が出来ること、やれることの振れ幅を大きく与えられているか否かで、良い機材メーカーほど、ユーザーに与えられている裁量というものが大きいと感じています。それは機材を製造する側としても、機材自体の度量の範囲を大きくすればするほど、深層部分で込み入った設計を求められるはずですが、それを承知した上で理想を追い求めるメーカーとしての姿勢というものが大好きです。 IGS Audioは、そんな理想的なメーカーの姿勢を持ち合わせ、Tubecore500をフラッグシップに据えている意味というものを感じさせます。

なぜ世界のトップスタジオはMAGIX SEQUOIAなのか?

  世界中のトップスタジオが、MAGIXのSEQUOIAを導入していることは、皆様よくご存じのことと思います。しかしなぜここまで支持を受けているのかを疑問に思われた方は多いと思いますが、現在国際エンドーサーとして活動する僕自身も、その昔は何故なのかをよく理解していませんでした。 SEQUOIAは12辺りから自分自身で購入して使い始め、確か13のバージョン辺りで国際エンドーサー、そして15辺りで国内独占販売権のライセンスを取得して、代理店としての活動に入っていったという経緯だったかと思います。ここまで様々な立場を取り、MAGIXと共にキャリアを積んできたのは、日本人では僕だけのはずです。実際僕の作品は、これまでほぼ100% SEQUOIAかSamplitudeで作成されており、その理由は簡単明瞭で『とにかく音が良いから』という点と、『メーター類の扱いやすさ、特にPeekとRMSは他のどんなプラグインやDAWでも追い付けない見やすさと正確さを持ち合わせている』という点、それに『純正のプラグインが物凄く優秀』という辺りが選択理由かと思います。 ご存じの通り、僕はハードギアなりプラグインなりを極限まで激しく使い込んでサウンドを作ります。極端とも言えるようなその使い方は、あまりその理由などなく、単に自分の頭の中で鳴っている音を現実世界に持ってくるには、あれくらいアグレッシブな使い方をしないと作り上げられません。何か計算をしているというよりは、理想がまず自分の中で走っていて、理想という形のないものをこの世の中に持ってくるプロセスこそが、あのToo Muchとも言えるような機材の使い方になります。 そこで必要になるのがSEQUOIAでして、強力なサウンドソースを何の嫌味もなく正直に受け止めてくれるDAWが必要になるわけです。単に透明感があるとか、密度が濃いとか、そういう理由だけでなく、強烈なサウンドを平然と粒立ち良く受け止めてくれるDAWはSEQUOIAだけだったということです。 こうした事例からも、どれほどの許容範囲を持ち合わせているDAWかをお判りいただけるかと思います。世界の潮流というものは、どの産業においても激しいものです。僕が率いる会社は現在、音楽や音楽関連の機材を販売するのみでなく、『音のディープテック』という立ち位置にて、研究開発を行い世界と戦う素養を持つ組...