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SPL Professional Fidelity シリーズを音楽スタジオへ


僕自身もスタジオで使用しているProfessional Fidelityを、如何にプロスタジオで使用するかという観点で本日は書いてみたいと思います。昨今Phonitor xやPhonitor seを音楽リスニング向けではなく、プロスタジオ向けにご導入頂いた案件が続きましたので、具体的な使用方法を用いてご説明してみたく思います。
昨今は特に世界市場での動向として、プロスタジオ向けの製品とリスニング用途の製品に隔たりが殆ど無くなり、同一機材でプロ・コンシューマーオーディオ双方に対応するという考え方が強くなりつつあります。僕が国際エンドーサーを務めるKii Audioは、ドイツやスイスなどで絶大な人気を誇っていますが、正に全く同じ機材でプロ向けとコンシューマー向け双方に別々のイベントを組むほどに、コンシューマーもプロ並みの精度をもってして音楽を楽しむという境地に到達しています。そんな背景から、ここ日本でも積極的にプロとコンシューマーの垣根をなくそうとする動きが活発化しています。特にPhonitor x、Phonitor se、Phonitor xeはVGPでも連続金賞を連発した絶対王者たちであり、近年ではこれ以上のヘッドフォンアンプは存在しないとする最高評価を市場から獲得しています。
僕自身もPhonitor xとDirector Mk2はスタジオで使用する立場でもあるので、どういった方向感で用いているかを合わせてご紹介してみたいと思います。

Professional Fidelity製品の中でプロスタジオでも用いられる機材と言えば、ヘッドフォンアンプであればPhonitor xやPhonitor se、そしてPhonitor xeといったVGP金賞常連の機材たちと、やはり長年にわたりVGPで受賞をし続けているDACであるDirector Mk2やDiamondという製品群になります。僕の場合は特に好きなのがPhonitor xとDirector Mk2でして、これは本当にメイン機材と言える立場で用いています。スタジオだからギンギンにきついサウンドで聴いているかというとそうでもなく、楽音における高い精度は臨界点と言えるほどの表現力が既にSPLのProfessional Fidelityでも行われており、更にはそこにSPLならではの芸術的表現が加えられているといった印象です。かえって、近現代の音楽制作における在り方として、既に高精度という意味ではこれ以上は必要ない境地に達していることを前提とすると、そこから更に求められるのは何と言っても最終的に表現される楽音の美ではないかと思います。それがSPLの場合は高精度と美が絶妙に共存しており、この辺りのエッセンスとセンス、そして感性というものは中々マネできるものではありません。それこそが、Phonitor xをはじめとする機材たちが、賞を総なめにしている主要因と言えます。
僕がエンドーサーに指名される2015年前後の音響機器の市場は、まだまだ伸びる余地というものを多く感じたものでした。全く新しい発想で次々に市場投入される各社の機材を見て、夜も眠れないほどに興奮したものですが、昨今はそのアイディアもそろそろ各社限界かな・・・という感覚を持っています。特に2017年~2019年あたりのエモーションは凄まじく、我こそはと個性的な機材で市場を埋め尽くしていました。その中で特に躍動したのがSPLの120vテクノロジーだったわけですが、ありとあらゆるSPL製品に120vが投入されていく姿は正に圧巻でした。そして世界中のスタジオに導入されていく姿というものを横目で見ながら、自分自身が国際エンドーサーとしての地位を与えられ、とても不思議な感覚に酔いしれたものです。





さて、ではどのように用いて行くのかを、自分の経験からもご説明できればと思います。Phonitor xについて、僕自身は間違いなく世界一のサウンドを持ったヘッドフォンアンプであると思っています。実際仕事ではもちろん使いますが、映画鑑賞などにも用いており、どちらに使用したとしてもヘッドフォンを力強く駆動させるパワー感と、楽音を芸術的に表現はしますが誇張しないところは正に逸品といった印象です。
スタジオにはKii Three+BXTというとてつもないスピーカーを手に入れた後、良いヘッドフォンとアンプを探した経緯がありました。世界最高精度と言えるKii Audioを手に入れ、空間で鳴らすことを前提とした機材を手にした後、更には密閉空間でのサウンドの必然性は自ずと発生します。その時に、メーカー問わずあらゆる可能性を取り入れようと、多種多様なヘッドフォンとアンプを聴きましたが、ヘッドフォンはケースバイケースで使い分けるとして、根本的な駆動を任せるという意味ではPhonitor xが最適と判断し導入しました(既にエンドーサーではありましたが、一流メーカーは使用することを強要しません。あくまで自分の判断で入れました)。ナチュラルでありながら高密度、あらゆる側面から非の打ちどころのない機材であり、更にはXLRで受けられるLINE INにも惹かれましたし、DACチップを積んでいるのでそのままUSB接続し直接DAWからのサウンドチェックも行えるという優れものです。特にお気に入りは、XLRで出力されるヘッドフォンジャックですね。全く別物の世界観を手に入れられるので、是非試して頂きたいところです。Phonitor xeとの違いはステレオのXLR出力が有るか無いかの違いと、音質の方向性が少し異なります。よりコンシューマー寄りに洗練しているのがPhonitor xeでして、ツルツルのサウンドは正に魅力的で、xとxeのチョイスはXLRへの外部出力と音質の違いと捉えて頂ければと思います。どちらもミックス・マスタリングで十分に使えますし、音像の理解も十二分すぎるほどの情報量です。
ある意味根本はコンシューマーオーディオと位置付けられている機材が、ここまでのサウンドを実現できてしまうということは、我々エンジニアやアーティストサイドも気を引き締める必要があるかと思います。誰もがこうした最高峰の楽音を手に入れられるわけですから、少しの粗というものも誰もが簡単に理解できてしまう時代にもなったわけです。昔はこのレベルのサウンドは本当に一部の人たちが手に入れていた世界観であったはずなのですが、捉え方を少し変えれば、高音質における民主化が完全に達成されたとも言えるわけです。この高音質の民主化運動は今後さらに加速して行くと思われ、常に制作側のスキル向上は極限まで求められることになろうかと思います。これら背景を感じながら、Phonitor xを選んだという経緯もありました。

また、Phonitor seも良く使う機材の一つで、Phonitor x or Phonitor xeが立体感を強調してくるのに対し、Phonitor seは目の前の立体感よりも全体像を映し出して来るという意味では非常に音像の見える機材でもあります。もちろんDACも積んでいるので、あらゆるところでの汎用性は抜群で、非常に小回りの利く機材でもあります。ここまで追求してしまうと、全て万能に使えるという機材はなく、それぞれに使い分けて行く考え方になります。ただ、エンドーサーとしてここまで追求したからこそ見えてくる景色というものもあり、改めてSPLというメーカーは粗のない最高峰の機材を実現してくる哲学を持ち合わせている会社だと思わされます。こうした多くの機材を使い込んだから故の景色というものご参考にして頂きながら、ご自身のベストソリューションに当て嵌められてみてください。どれを導入されても満足されることは間違いありませんが、「満足の更なる上の結果を伴う作品の完成度」という充実感を前提に書いてみました。ジャンルはどの機材もあまり選ばない印象で、僕の仕事はウィーンフィルハーモニー(世界を代表する伝統音楽)からジャーマンラップ(完全な打ち込み)までありましたが、どれもPhonitor xで十二分すぎるポテンシャルを発揮していました。




さて、次はDACです。僕はDirector Mk2が出てきた当初から、ずっと大好きなサウンドであると発信し続けてきました。ワードクロックの機能を持ち合わせていないので、同期は出来ませんが、それを上回るほどの能力を持ち合わせていると感じています。兎に角広大で視野の広いサウンドと、美しく描かれるディテイルが大好きで、多くの作品で活躍してきました。例えば、以下のようなサウンドを創り上げる時にも大活躍しています。




ナチュラルでありとてつもない透明感を求めたわけですが、多くの機材の集合体ではありながらも、DACもその多くの要素の中の重要な役目を果たしますので、このサウンドの一部を担っているとお考えいただければと思います。ピアノと40人を超える大編成のストリングスセクションが織りなすハーモニーを表現していますので、楽曲のエネルギーとしては激しいラップを超えるような負担が機材には掛かります。多くのジャンルの作品に参加してきましたが、やはりこうしたアコースティック楽器の編成が最も難しく更には機材自体に求められるスキルも最高峰と言えると感じています。
大編成故に、それぞれのセクションにおける住み分け、分離がこういう作品では重要と思っています。それをものの見事に表現してくれた一例です。




ドラムが入ってくるようなバージョンもご紹介してみたいと思います。これもDirector Mk2で仕上げています。繊細かつ大胆なアプローチを行うには、最高の機材です。




最後に今回ご紹介している機材の中で、最新のリリースとなるDiamondです。リスニングと位置付けるにしては、「ここまで行ってしまったか」と思わせるほどの精度で、ワードクロックも装備していることから、かなり制作用途も意識している感もあります。ただその精度が行き過ぎてしまい芸術を無視しているかというと、全くそんなことはなく、確かにリスニング用途としても非常に魅力的で、近々自分のリスニング環境用に導入予定です。現在Director Mk2を主流としているので、そこにもう一台エッセンスを加えようと思っています。
そして最新リリース故の、冒頭に言及したプロオーディオとコンシューマーオーディオにおける垣根の排除を、最も感じさせる機材でもあります。高音質においての民主化の最右翼とも言え、ワードクロックをコンシューマーオーディオと位置付ける機材に装備しているところからも、こうした背景を感じ取れます。SPLにはプロ用途のMercuryというDACが存在し、スタジオでも導入しているのですが、用途は限られると思っています。物凄いサウンドを奏で、特に低音のタイトな雰囲気は逸品なのですが、それ以上でもそれ以下でもなく、精度高く美しさを求めるという感じは余りないかな・・・と思っています。むしろゴリっとした厳つい感じを楽曲内に残すことから、広範囲なジャンルの作品に参加する自分にはむしろあまり向かない機材です。EDMやロック、ラップなどに限定的に使うことはありますが、アコースティック楽器を中心に扱うような楽曲では、やはりDirector Mk2かDaimondかな・・・と思います。
そして今のところの所感として、Director Mk2とDiamondの違いですが、楽曲の広大さと究極の透明感を求めるのであればDirector Mk2、カチッとした楽曲の精度と形を重視するのであればDiamondということになろうかと思います。更に近い将来、Diamondを自分のリスニング環境に導入し聴き込みを行いレビューも出してみたいと思います。


以上、僕の個人的な見解も相当に入っていますが、国際公式エンドーサーという公的な立場からも見解を出していると思って頂いて全く問題ありません。やたらに何かに入れ込んだり、思い込みでの発言はなるべく排除しているつもりです。Phonitor xが現在世界で最も評価の高いヘッドフォンアンプであることは、あらゆる受賞歴からも顕著なことから、「世界一」という表現を用いました。
また追って、Professional Fidelityの扱いについて、様々なノウハウをご共有して行きたいと思います。







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