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11月, 2018の投稿を表示しています

僕がアビーロードスタジオとスターリングスタジオに競り勝てた理由

  皆様こんにちは。 さて、今回は少し挑戦的な題名で始めさせて頂くブログですが、やっと解禁できる内容でも有るので、思い切った題名にさせて頂きました。 上の動画は、ドイツにおける2018ワールドカップの公式曲で、僕がマスタリングを担当しました。元々は演奏しているアーティストの楽曲を担当させてもらい、今年の5月にヨーロッパチャートで7位を獲得し、その付き合いの延長線上で声をかけてもらったという仕事でした。 このDie Denkazというドイツの二人組における「German Rap」というスタイルの楽曲は、グループのStefanが楽曲を積極的に書き、更にプロデュースも自ら行うというスタイルを持っています。 そのStefanから、 『今ワールドカップの曲を担当しているのだけれど、ラジオで流すと酷い音なんだ。なんとかならないかな?』 という相談を持ちかけられたことが事の発端でした。そして、 『君のマスタリングも聴いてみたいんだけれど、アビーロードにもスターリングにもそしてドイツのUleiのところでもマスタリングしてみて、一番良いと思えるものを採用する予定だよ』 との一言が付け加えられていました。常にコンペすること自体は慣れていますし、世界中から送られてくる音源には、ある一定の量で 『アビーロード、スターリング、メトロポリスはこういう感じだった』 という一文が付け加えられています。また他にはデイブ・コリンズやマオロ・アッペルバウム、トム・ウォズニック、その他ユニバーサルスタジオやロシア、中央ヨーロッパ辺りのスタジオなどが比較対象として述べられることが多々あります。 もっとも多くのマスタリングエンジニアやスタジオは、Facebookで繋がっていることが多く、見たことのある名前ばかりであることも確かですし、世界と競争するということは、こういう激烈な争いに勝利しなければ生き残れないことでも有るわけですから、当然と言えば当然です。 それでこのワールドカップの曲の場合は、テレビ局が付いているということもあり、予算がかなり潤沢であったのでしょう、4者を比較して競り勝ったところを採用という形式をとっていました。 声を掛けられた側としては、ギャランティの支払い云々はもう度外視の状況で、自らの音で何

世界と日本の音色の違い

皆様こんにちは。 常に環境は変化しますが、更に最近は刺激の多い毎日で、私自身も大きく夢を育むことが出来ています。 さて、そんな毎日の中ですが、機材や音作りに関するご質問を多々頂戴しますので、今回のブログ記事に交えましてご回答をしていきたいと思います。 今回は、音作りにおける『耳』をどう養うのか?という箇所に照準を当ててみたいと思います。機材を導入する折、またその導入した機材をどういう方向性で扱っていくのか?もしくはそもそも自らのスタジオ内で、どういう音を目指すのか?目指した先に、更に求められるものは何なのか?この辺りを共に考慮してみましょう。 私の仕事環境は、既にご存知いただいているかと存じます。昨今流行りのOnline Mastering & Mixing(海外では、Remote Masteringなどと呼ばれています)を用い、世界中から音源制作を受注しています。国に関しては、最近はもう全くもってのボーダーレスという状況になりました。着手した折には、アメリカやヨーロッパが多かったのですが、最近では東南アジアから中国・韓国、加えてドバイを中心とした中東やインドを筆頭に西アジア諸国、そしてアフリカまでもがアクセスを頂く状況です。ここまで来ると、所謂全世界という言葉が似合うかと思いますが、それと同時に内外価格差や物価の違いも顕著に感じる仕事でもあります。先日はネパールからデビューする新人のマスタリングを依頼された折、当方で定める世界標準の額面を提示したところ、彼らの月収だという回答がありましたが、そのまま依頼を受けたこともありました。 しかしこの内外価格差の激しいネパールから送られてきた音源は、かなりのレベルで作られていたことを記憶しています。同じように物価の低い傾向にあるアフリカも、音質のレベルというものになると非常にクォリティが高く、所謂グローバルスタンダードに所属する音質です。現代の音楽制作環境においては、様々に事情は有るのかもしれませんが、それでも一定の基準というものにどの国も準拠してくる傾向というものを感じます。 それと対象的なのが日本の音楽制作、並びにスタジオワークです。簡単に言えば、世界から送られてくる音源とは異なり、唯一無二の方向性で作られています。巷で言われる、 『洋楽とJ-POPの音質の違い』 というものは、むしろ

新しいマスタリングチェインとデジタル環境

やっと形になったマスタリング・チェインの一部 新しいマスタリングチェインが、一部完成しました。 今までも、そしてこれからもそうですが、基本的に僕の姿勢というものは、最先端の技術を追い求め、そして常に更新される新たなサウンドを作り込んで行くことに違いないかと思います。そうした姿勢の中で、機材構築をしていくことも、そのエンジニアのセンスと才能がと最も表現されるところでもあり、その手腕如何で次のステージに進むことが出来るか否かを問われる部分でもあります。音色のベースを何処に置き、そして自らの感性と技術をどういう形で活かしていくのかを考慮する折、機材のあり方というものが非常に重要になります。 特にマスタリングの世界は、ドイツ勢を中心とするメーカーの躍進が凄まじく、新しい世界観をものすごいスピードと、最新の哲学を構築して一気に放出するという手法が取られています。特にエンドーサー契約を持つSPL社は、間違いなく現在のマスタリング機材におけるキングであり、どこのメーカーも追い付けない素晴らしくもエグいくらいの機材たちをリリースしてきています。 またもう少し異なる視点では、同じくエンドーサー契約を持つBettermaker社が、プラグインで各セクションの機能を弄れる機材をリリースしてきていますが、そのプラグインでの操作という以上に、各ファンクションの哲学と、全く異なる世界観を演出することの出来るM/S機能を持ち合わせたEQを発表してきました。 この辺りの機材の導入は、約1年間を掛けてチェイン全体を見渡しながら、 『自分は一体どのような哲学で音を構築し、そしてどんな音色を奏でたいのか?』 という自問自答を繰り返しながら、十分に納得できた段階で導入を繰り返しました。また、EQセクションには更に Costum Audio Germany HDE250A が既に導入済みであり、同じくM/S機能を持ち合わせているEQでありながら、非常に素直なBoostが可能なEQとして、異なる視点からマスタリングに入ることが出来るシステムを構築することが出来ました。この後は、SPL社を中心としながらマスタリング・コンソールの導入とルーターの導入を行い、更には真空管のコンプレッサーを先ずは一つ入れようと考えています。 大分形になってきたマスタリングセクションですが、アイディアは半

SPL マスタリングコンソールと共にルーターを発表。

SPLの快進撃が止まりません。 マスタリングコンソールであるDMCを発表した折には、その構想自体を1年前には聞かされており、そして昨年の11月には実機を触る機会も与えられました。その折に思ったことは、新しい機能は追加されているけれども、これであればMaselecの方が上であると感じました。唯一勝るとすればSPLの音でしょうが、幾重にも機材を使い分けるマスタリングエンジニアたちに、音だけで勝負するのは難しいのではないかな・・・などと感じたものです。欲しい機能は圧倒的にMaselecにインストールされており、特に機材を繋ぐことで発生する、位相を最小限に抑えるインサート機能は魅力的です。他にもフィルターや、音量バランスを整える機能も充実しており、流石に世界を制覇しただけのことはあると、逆にMaselecの存在を大きく感じてしまったものです(エンドーサーがこれじゃ駄目ですね(笑))。 が、しかし、今回のルーターの発表で、SPLの考えるマスタリングコンソールの全体像が映し出されたわけで、これは世界のどのメーカーも、これに勝る機材を発表することは、ほぼ不可能になったと言えるでしょう。音は勿論、機能においても優位性が圧倒的すぎて、たった1人で出来レースを戦っている様相を呈してきました。 ビデオマニアルがあるので、御覧ください。 https://www.facebook.com/spl.info/videos/2738724099486920/?__xts__[0]=68.ARBtOng0--0z3EOe-iEaD6L5IZP6Uk_d5KYV4EENwTMaL9cli3mdXvBC1fBS0-NN28SXV9LD8jHUNnEX8F0BjfeXAyXXqPNC9XhpEi4SH8Le5JVdeQAZqfiGP_Yi3bb8TiRn_cLaCidact6YBMFUb3H2yIPOVCb3KyHCfN9S5EggatgDYdKlLyuzX56ovWApxpN5tq7BEtrWIzXZOfWC3_x12n3udsQXPlAF-xw&__tn__=H-R デジタル・ルーターの構想は、昨年マスタリング・コンソールを触らせてもらった折に聞いていましたが、本当にこんな事ができるのか?と思えるほどに複雑な回路のはずです。通常は1対1で纏め上げてしま

SPL社がニューリリースした、150dBのダイナミックレンジを誇るマイクプリアンプCrescendoを導入

皆様こんにちは。音楽業界は繁忙期を迎え、物凄く多忙な日々を過ごしております。ヨーロッパに11月終わりに行くはずでしたが、忙しすぎて延期となりました。 しかし、その忙しさを心の底から楽しんでいます。趣味が仕事、仕事が趣味の身ですので、クライアントから音について相談され、それを様々な視点からプロデュースして、最終的には現実の世界に理想の音を持ってくるという作業は、いくらやっても終わりのない世界ですし、僕の天職だと感じています。 僕の場合は日本でエンジニアリングは習っていないし、欧米メーカーと直接のエンドーサー契約なので、正に世界の最先端の音に触れ、誰よりも自由な発想を用いて、世界の音を牽引していく構図をデザインします。この自由な発想こそが、これからのサウンドプロデュース、エンジニアリングに求められていることで、国内が世界の最先端から20年は遅れている現状を考える時、無くてはならない感性だとも思っています。 さて、前置きはこれくらいにしておいて、その世界最先端なる物が何であるのかという一例を示したいと思います。 昨年の今頃だったかな・・・SPL社のサーシャの元を訪ね、一緒に湖のほとりでステーキを食べたときのことです。写真があったかな・・・今のところ、世界で一番美味しいステーキだと思っているのですが・・・ ありました。ベルギーとオランダの国境まで10分ほどで行けてしまう湖のほとりで、サーシャと食事をしながら、色々と語り合いました。その折に、 『ねえ、あの120vテクノロジーを、マイクプリアンプに転用できないの?』 という会話が、このCrescendoの始まりでした。その折彼は、 『考えておくよ』 とだけ言ってくれ、何も進展がないまま半年が過ぎた頃に、いきなり構想がある旨をメールで伝えられ、プロトタイプがFacebookページにアップされ、あっという間に製品化されることを知りました。そして僕の手元に渡されたのは、エンドーサーとして2番目の機材でした。最も早くAESショーと共に渡されたのはUrei Tropetsで、彼はサイモン・フィリップスのミキシングなどを手がけている、デュッセルドルフのエンドーサーです。つまりは、SPL社にとって、外国勢としては最初の1台を僕に渡してくれたことになり、段々とエンドーサーの中でも地位を上げることが出来ている

Bettermaker Mastering EQ

皆様こんにちは。 さて、最近はライブレコーディングの部門が立ち上がり、本格的に会場でのレコーディングがスタートしたことで、そちら寄りの機材を相当数導入しています。 そんな合間を縫って、何とか導入できたのがBettermakerがリリースしてきた、Mastering EQです。232P MKⅡで既に実績のある同社ですが、CEOのMarekから聞かされていた、そのフィロソフィーたるやかなりのものでしたので、僕としては大いに期待値を膨らませてこの機材の到着を待っていました。 既に幾つかの作品で使用してみましたが、溜息が出るような素晴らしいサウンドを創り上げてきます。特にこれまでの常識を覆した、パッシブとパラレルの同居、更には全てのモードにはM/Sを用いることが出来、これ1台で相当な音作りが可能なはずです。ルーティングについては楽曲ごとに異なるので、一重には言えないところがあるのですが、僕ならば1st EQとして用いるか、若しくは一番最初にコンプレッサーを噛ませて、質感を創り上げた後に、その直下にこのEQを置き積極的に音作りを行うかと思います。 色々な考え方があるかとは思いますが、HPフィルターも含まれていますので、パッシブでブーストした低音側を、HPフィルターで美しく整えていくという手もあります。更には最終弾にもう一つEQを噛ませて、Mastering EQとHPフィルターで創り上げた低音部を、更にブラッシュアップするという手もあるかと思います。 例えばこういう形を取ります。Bettermaker Mastering EQの下にSPL PQを用い、積極的にブーストしたサウンドを、今度は120vテクノロジーを用いるダイナミックレンジの広いPQで受け止め、更にカットやブーストでブラッシュアップするという手法もあります。 この辺りの構成は、かなり進んだ考え方を持ち合わせており、世界の最先端を行く音作りと言ってもよいかと思います。 僕も参加している世界的なマスタリングエンジニアたちの集うFacebookページでは、ガンズ・アンド・ローゼズなどのマスタリングを施しているMaorも、 『俺のも今道中だぜ』 などコメントをくれ、その他には、Bob Katzさんもメッセージをくれ、 『実際に使ってみた感想は?』 などなど、世界中で話題沸騰中という感が