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SPL社がニューリリースした、150dBのダイナミックレンジを誇るマイクプリアンプCrescendoを導入


皆様こんにちは。音楽業界は繁忙期を迎え、物凄く多忙な日々を過ごしております。ヨーロッパに11月終わりに行くはずでしたが、忙しすぎて延期となりました。
しかし、その忙しさを心の底から楽しんでいます。趣味が仕事、仕事が趣味の身ですので、クライアントから音について相談され、それを様々な視点からプロデュースして、最終的には現実の世界に理想の音を持ってくるという作業は、いくらやっても終わりのない世界ですし、僕の天職だと感じています。
僕の場合は日本でエンジニアリングは習っていないし、欧米メーカーと直接のエンドーサー契約なので、正に世界の最先端の音に触れ、誰よりも自由な発想を用いて、世界の音を牽引していく構図をデザインします。この自由な発想こそが、これからのサウンドプロデュース、エンジニアリングに求められていることで、国内が世界の最先端から20年は遅れている現状を考える時、無くてはならない感性だとも思っています。

さて、前置きはこれくらいにしておいて、その世界最先端なる物が何であるのかという一例を示したいと思います。
昨年の今頃だったかな・・・SPL社のサーシャの元を訪ね、一緒に湖のほとりでステーキを食べたときのことです。写真があったかな・・・今のところ、世界で一番美味しいステーキだと思っているのですが・・・



ありました。ベルギーとオランダの国境まで10分ほどで行けてしまう湖のほとりで、サーシャと食事をしながら、色々と語り合いました。その折に、
『ねえ、あの120vテクノロジーを、マイクプリアンプに転用できないの?』
という会話が、このCrescendoの始まりでした。その折彼は、
『考えておくよ』
とだけ言ってくれ、何も進展がないまま半年が過ぎた頃に、いきなり構想がある旨をメールで伝えられ、プロトタイプがFacebookページにアップされ、あっという間に製品化されることを知りました。そして僕の手元に渡されたのは、エンドーサーとして2番目の機材でした。最も早くAESショーと共に渡されたのはUrei Tropetsで、彼はサイモン・フィリップスのミキシングなどを手がけている、デュッセルドルフのエンドーサーです。つまりは、SPL社にとって、外国勢としては最初の1台を僕に渡してくれたことになり、段々とエンドーサーの中でも地位を上げることが出来ている実感があり、非常に充実しています。

さて、そんなCrescendoですが、早速実際に使ってみての感想です。端的に表現すると、もはやSPL社はこれまでの音質を見限り、完全に新たな音のトレンドへと舵を切っています。昔からの伝統を守るイギリス系(英語圏の代表格はSSLやNEVE、アメリカだとAPI)は、新しい機材が出てきても、何かしら新しいトレンドを思わせるようなことはしてきておらず、ずっとレガシーを引きずったままです。アメリカもしかりですね、特段新しい発想で、これまでの考え方を更新しようという考え方はなさそうです。
そもそもSPLもelysiaも、最先端という考え方、そして孤高の機材を作る土壌を十分に持ちながらも、まるで毎年のように自己否定をするがごとく、これまでとは全く違う景色を手に入れようとトライを繰り返してきています。
今回のCrescendoを例に出せば、アナログでデジタルマイクを越えるような質量、そして音像の大きさというものを実現しようとしてきているように思え、所有するデジタル対応のSennheiser8020をCrescendoに繋いだところ、デジタルよりもむしろ柔軟性と楽音の美しさを感じさせる仕上がりを見せています。加えて、Brauner Phanthera、Sony C100などを接続してみても、それはそれは美しくもパワフルな音色を収録でき、新世代の美しさの極みというものを手に入れる感覚でレコーディングに臨んでいます。
毎年新機材の投入、新世代の音を創り上げてくるSPLですが、一度リリースした機材をそう簡単には更新してきません。恐らくは今後10年を見据えてのリリースとも言えるでしょう。今のところは、King of Mic Preamplifireと言うことが出来、そう簡単に追い抜かれることはないでしょうね。唯一僕が被るところがあると思えるのは、elysiaのSkulpterで、ダイナミックレンジと言うよりは、あの音色を手に入れたいということになれば、他の選択肢としては十分かと思います。elysiaならではの、楽器の倍音の向こう側を限りなく美しく映し出す、濃厚ながらもHi-Fiな音色は、どの他のメーカーも行き着けていない境地です。また、Pupert NeveがDante対応のマイクプリアンプを出してきたので興味はありますが、どうしても英語圏故の発想とでも言いましょうか、システムの利便性は面白い発想だとしても、音そのものについては新たなものを感じることはありません。それだったら、AD/DAコンバーターをDante対応にして、次世代の音を演出してくるメーカーのものを使いたいと思わせるのは人の性というものです。
特に僕の場合は、開発の段階から企画を知っていたり、自分の提案したものが製品に組み込まれたりするので、その傾向が強いかと思います。
Crescendoで収録した楽曲がリリースされた折には、是非ご紹介させていただきたいと思っております。


Hiro's Mixing & Mastering / http://www.hirotoshi-furuya.com/shop
(ミキシング・マスタリング、こちらからご依頼ください。)
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