スキップしてメイン コンテンツに移動

Phonitor3 レビュー


Phonitor xとPhonitor xeというSPLの顔とも言えるヘッドフォンアンプ2機種に少し隠れる形となりますが、Phonitor3という名機も存在しますのでブログ記事にしておきたいと思います。Phonitor xとPhonitor xeはリスニング寄り、Phonitor3はスタジオ寄りというイメージがあるかと思いますが、僕はあまりその方向性というものは感じていません。何よりも

『どういった音を欲しているのか?』

という論点に集約して議論を展開したいと思うのですが、僕自身が自分のスタジオに導入する機材をスタジオ系とされるPhonitor3から始まり、結局Phonitor xに落ち着いたという経験からも、十分なケーススタディを構築できているかと思いますのでお伝えできたらと思います。

Phonitor3は、ずばりサウンドの方向性をお伝えすると『リニア、リアル』という言葉に集約されるかと思います。かなり楽曲内のディテイルというものを、しっかりとした輪郭を持ってして精度高く表現しようとしているイメージです。こうしたサウンドを求めるのであれば、圧倒的にPhonitor3を選ぶべきかと思います。これは別にスタジオ用ということだけでなく、十分にリスニングとしても対応できると感じており、例えばジャズなどの楽曲をその場のリアリティあるインプロヴィゼーションや、各楽器のエナジーを求めるのであればとても良い選択かと思います。

では何故Phonitor3からPhonitor xへ買い換えたのか?という論点ですが、僕の場合は各楽曲の中のディテイルを細かに聴き分けるというよりは、全体像としての楽曲の完成度を判断する材料にヘッドフォンアンプを使う傾向にあります。スピーカーは1000万円近くの価格が付くようなKii Audio(こちらも国際エンドーサー)のフルコンフィグレーションを使用していますので、Kii Auidoにない要素をPhonitor xに求めています。どちらかというとKii AuidoもHi-Fi Audioとして本国ではプロモーションが行われていますが、かなりリニアかつリアルです。最高に美しいサウンドを奏でますが、正直長時間聴いているのは疲れるような精度の高さがあります。全体像としての楽曲の完成度を感じるための要素は、Kii Audioにもふんだんに含まれるのですが、更なるフラットな楽曲の完成度を純度高く聴きたかったのでPhonitor xを選びました。

完成度の高いヘッドフォンと組み合わせた時のPhonitor xは、これでもかと言うほどの美しきサウンドを奏で、更には楽曲のディテイルも良く見えます。しかし、リニアやリアルに関しては若干控え目にしながらも、強力なSPLの120vテクノロジーと相まって、広大なステレオサウンドで楽曲を演出してくれます。

対してPhonitor3はPhonitor xとはある意味対局で、広大さよりもより近いサウンドで攻めてくる印象です。近いからこそリニアでリアルなわけで、ここが先ほど書いたように『使い分け』になってくるので、甲乙付ける話ではないと思います。同じメーカーで、ここまでそれぞれのキャラクターを揃えてくるのは、流石最高峰のメーカーと言えますし、彼らの芸術的センスと才能には脱帽といった感があります。

各機材とも性能は実績値からもお分かりの通り間違いありませんから、あとはご自身の趣向で何が良いのかを選ばれてみてください。ご参考になりますと幸甚です。

コメント

このブログの人気の投稿

日本で230vの運用について

電源において200vは簡単に引くことのできる国内ですが、ヨーロッパ製が大多数を占めるスタジオ機材においては230vがメインのため、電圧が足りない状況に陥ります。故に200vを減圧して115vで使用するケースが殆どと言え、この200vをなんとかして230vで運用してみたいと思った方は多いはずです。 もっとも僕もその一人で、アメリカで聴くサウンドとヨーロッパで聴くサウンドの違いというものは、双方の国に行くたびに感じていたことでした。勿論考え方が根本的に異なる両者ですので、違いが出て当然なのですが、機材の違いでもなく録られる音質の違いでもなく、何か本当に根っこの部分でヨーロッパとアメリカの違いというものを感じていました。僕も手っ取り早いので、115vは直ぐ様導入して100vとは異なる音質を手に入れることはできていました。 ここで電源やケーブル、タップ類の話になる前提として、絶対的に根本的な考え方が根底で出来ていること、そして自らの耳を常に疑われる、非常にレベルの高いクライアントたちから、ガンガンにクレームを言われながら鍛え上げられている柔軟な感性を持ち合わせていること、そして世界中の新曲に触れる機会に恵まれていることが絶対条件になります。自で 『 自分の作る音ならば間違いない、俺の価値観は絶対だ』 と思ったり考えているのであれば、その人は決して上に突き抜けることはありません。その考え方で、どうにかなってしまうクライアントしか仕事を受けられないからです。最高レベルに行き着くこともなく、成長はそこで止まります。適正な報酬、最高レベルでの感性と技術を売り込めば、それなりに自らの感性にも技術にも自信のあるクライアントからオファーを貰うことになります。そしてガチンコで意見を出し合いながら音を構築していくわけで、その場では必ず意見の衝突が起きます。その衝突を糧としながら、自らの感性や視野を育てていくことになり、そうしたクライアントと年に10人も出逢えばかなり揉まれます。自らの価値観など無に等しいくらいに否定され、揉みに揉まれて最後に残った価値観こそが自らのものとして最終的に残ることになるでしょう。また痛いのは、海外からのオーダーで、言語が全くわからない曲があったりします。例えばドイツ語やイタリア語、スロバキア語やウルド語(インド・パキスタン周辺の公用語・・・なのかな)が用いら...

ミックス・マスタリングが上手くなりたければ、効きが強烈な機材を使え

  久しぶりに機材レビューではなく、音に対してのテクニック的なことを少し書いてみようと思います。最近聞こえてくる声として、 「古屋さんに影響されて、〇〇を買いました。」 或いは 「あの作品のあの音に憧れて、〇〇を買いました。」 というお言葉を頂きます。自分としては世界一の機材だと思っているからSPLを使っていますし、会社で代理店のライセンスも持っています。なので、皆様からのお声は心から喜ばしいことですし、全責任を持って間違いのない世界一の機材を購入して頂いていると思っています。これは自分の日々発言していることと行っていること、望んでいることとその結果によって良い影響を多方に渡って与えられていることは、全ての要素が一つの方向を向いて整合性が取れていると感じられ、大変喜ばしいことです。 では、SPLの何が世界一と言えるのか?或いは全く方向性は異なりますが、IGS Audioも一体何がそこまで魅力で、僕の会社で扱おうと思ったのか?色々と要素はありますが、端的に言えばそれは双方に非常に効きが強烈で、楽音を一発で別物に変化させてしまうパワーを持っている激しい変化率です。世界の激しい潮流で戦う僕としては、この強烈な狂気とも呼べるような音の変化が無ければ戦いようがありません。ちょこちょこっと、すこーしだけの変化で変わったのかなぁ・・・・みたいな楽音構成で勝負していては、絶対に世界で選ばれることはありません。これは断言できます。マスタリングであれば、特に劇的な変化をほぼ100%求められます。なので、どう扱ったら良いのかわからないくらいの激しい変化を持つ機材を手なずけ、自分の想像している楽音を遥かに超えるような機材に触れないと、激しい結果をもたらすことのできる自らの創造力がそもそも育ちません。可能性があれば何処までも追求したくなるのが人間で、やれるだけやり、行き付けるところの限界まで追い込んで、追い込み、更に追い込んで・・・・とやると失敗することも多々あります(笑)。 ただ、この徹底して追い込むというものが極限の極限まで行くと、そこから幾分か差し引くことも上手くなるようになります。いわゆるそれを調整と呼ぶのでしょうが、その調整できるところまでは、とにかく極限の追い込みこそが上達します。追い込みすぎてその国でスーパースターと呼ばれるアーティストにクビになったことも多々ありました...

SPL Channel One Mk3レビュー

以前にデモ動画を担当させて頂いた、 Channel One Mk3 について触れてみたいと思います。この動画は国際エンドーサーのデモとしてSPLの本国でも採用されているのですが、サクッと撮影してしまいましたので、画角など課題も多いですが、アマチュア感溢れる動画にどうかお優しい目線で見て頂けると幸いです。 さて、この機材としての所感として、孤高で最先端を行くSPLならではということで、先ずは非常に多彩であることは動画の通りです。真空管のOn/Offまで盛り込まれており、チャンネルストリップとしては限界とも言える機能の盛り込み方で、元々多彩なSPLの機材の臨界点を見たような気分です(笑)。各機能については、マニュアルと動画を併せ持たせて理解を進めて頂ければと思うのですが、恐らくは皆様何と言ってもこの機材の音に対しての所感を書いて欲しいところかと思います。 先ずChannel One Mk3は、120vが採用されていないというところが最も大きい特徴かと思います。120vの搭載/非搭載は、SPL社が『この機材をこういう音にしよう』という前提がかなり色濃く出るところでして、120vが採用されている機材は、良い意味でも悪い意味でもスーパークリーン、限界を超えるようなHi-Fiを求める方は是非120vを積んだ機材へ行っていただきたいと思います。それに比べ、120vモジュールを積んでいない機材に関しては、SPLならではのクリーンさと共に『かっちり感』『固まり感』というものが全面的に押し出されている感じがします。ここは本当に使い分けだと思いますので、理想は120vを積んでいるスーパークリーンの代名詞であり限界値とも言える Crecendo と、120vを積んでいない今回のChannel One Mk3双方に持ち合わせていることが楽曲制作により華を持たせてくれるかと思います。 今までの作品でも僕の場合は、この辺りの音色感で使う機材を決めていたというところがあります。 例えば、ジョン・キャペックを迎えて制作したエルトン・ジョンのYour Songを、エルトン・ジョンのドラマーとしても著名なチャック・サボを迎えて、実際にドラムを叩いてもらった作品があります。この時僕が使用したドラム向けのサミングミキサーは、 Mix Dream を使用しており、このMix Dreamには120vは採...